MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 千葉県の医療、ことに山武長生夷隅医療圏の医療は、医師、看護師が極端に少ないがゆえに、極めて脆弱である。亀田総合病院は、この地域の救急医療を守るために、2012年7月1日より、塩田記念病院(旧福島孝徳記念病院)に医師を出向させることになった。

福島孝徳記念病院の「移転」

塩田記念病院

 2012年5月2日、神の手と称される脳外科医福島孝徳氏が記者会見を開いて、福島孝徳記念病院の運営から離脱することを明らかにした。

 福島医師自身のブログには、「千葉県長柄町福島孝則記念病院・脳神経センターは、江戸川区西葛西・森山記念病院と川崎市麻生区・新百合ヶ丘総合病院に移転することになりました」とする2012年5月3日付けの文章が掲載された。

 常勤の脳神経外科医の多くも、これを機に病院を退職するという。入院患者が激減し、病院の存続が危ぶまれる状況になった。

 医療法人SHIODAが、この病院を建設し、開院以来継続している赤字を、塩田病院の収入で補填してきた。

 塩田記念病院(旧福島孝徳記念病院)が維持できなくなると、医療法人SHIODAが財政負担に耐えられなくなる可能性がある。出向した医師は、亀田総合病院の全面的な援助の下、来年3月までこの病院を維持すべく活動する。その間に人事を含めて、本格的な再建を講ずることになった。

山武長生夷隅医療圏

 塩田記念病院(旧福島孝徳記念病院)、塩田病院はそれぞれ、千葉県長生郡長柄町、千葉県勝浦市に位置し、山武長生夷隅医療圏に属する。

 この医療圏は、千葉県の九十九里浜に沿って不自然に細長く伸びている。二次医療圏データベース(2012年6月1日版)によれば、人口46万7762人、10万人当たりの勤務医師数は43人(全国平均123人)と極端に少ない。

 2000年代半ば、県立東金病院、国保成東病院、公立長生病院などが医師不足のために、連鎖的に診療を縮小せざるを得なくなり、医療崩壊の最前線として有名になった。