調査ディレクター兼選挙トレーナーとして活躍する野沢高一氏をゲストに迎えた、今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)。

 世論調査などのデータ研究や数多くの選挙分析を行う野沢氏(アノン代表取締役)が、日本の選挙制度の現状や有権者の視点から見た政治の課題について語った。

小選挙区比例代表並立制が政治にもたらした変化

有権者が候補者を選ぶ「基準」が見えにくくなっている(撮影:前田せいめい)

中山 日本ではかつて中選挙区制の下で選挙が行われていましたが、平成8(1996)年の第41回衆議院議員総選挙から小選挙区比例代表並立制に移行しました。こうした選挙制度の変遷について、野沢さんのご意見をお聞かせください。

野沢 最近、中選挙区制に戻すべきだという議論が復活していますが、私はそこに一石を投じたいと思っています。

 中選挙区制時代にも個々に見て魅力的な国会議員はたくさんいましたが、基本的には議員を応援するというのは組織を固めることであり、それが選挙で勝つための一番の条件でした。

 一方、小選挙区制になってからは、選挙区が狭くなった分、政治家を生活感や息づかいなど“政策プラスアルファ”の部分で有権者が選べるようになった。これは小選挙区制のメリットだと思うんですね。

 ただ、問題もあります。従来の世論調査では「今、衆議院が解散したらあなたは誰を支持しますか? 誰に投票しますか?」という設問の仕方をしていました。それが最近は「どの党の候補者を支持しますか?」というように、個人よりも党の方がクローズアップされるようになった。

 それに伴い、選挙ではポピュリズムやパフォーマンスなど、本人のキャラクターをどう売っていくかが逆に重要になりました。

 ですから、本来なら政策と候補者の人物の両方で選べるはずなのに、有権者が選ぶ基準作りがなくなった気がします。また、その投げかけをすべき政治家やメディアも、役割を果たしていないのではと思います。

電話調査や郵送調査では世論をキャッチできなくなっている

中山 おっしゃる通り、政治家個人より政党のイメージが先行している気がします。今の民主党にも個人として評価できる人はいると思いますが、「この閣僚がダメだから」「総理がこんな発言をしたから」という理由で評判を落としている部分もありますね。

野沢 総理は大きなファクターではあると思いますが、民主党の政権交代前のイメージは、若さと強さでした。それが、今の民主党政権や党そのものからあまり感じられなくなった。民主党の支持率が下がった大きな要因はそこにあると私は見ています。