先日の公務員新規採用枠削減のニュースに対する有権者の反応は、私にとって意外なものであった。

『DOJOU』(©小田明志)

 「若者よりも使えないオヤジのクビを切れ」とか「50年後の国は誰が背負うのだ」といったまっとうな意見が多く聞かれただけでなく、政府による「若者いじめ」という言葉を使うメディアもあったからだ。

 私が『若者よりも内向きで保守的な団塊世代―若者への非難でなく応援を!』という記事を書いたのが、約1年前。

 「内向き」「ゆとり」「草食系」という流行言葉を使った、根拠無き若者叩きが繰り広げていたあの頃を考えれば、今回の反応は考えられないほどに優しい。だが、残念ながらそれも我々若者にとってはいい迷惑以外のなにものでもない。

 歳出抑制を目的とした新規採用枠の削減は、岡田副総理の言葉通り「民間でも業績が悪いと採用を抑制する」当然の措置だ。

 問題とされているのは、採用枠の削減とほぼ同時期に決定された、希望する定年公務員の再任用義務化の決定である。

 若者の採用を減らした一方で、高齢の公務員の再任用を保証するのは、歳出抑制という目的を考えれば矛盾しているように見えるから、先に書いたような「まっとうな意見」が出るのは当然のことかもしれない。

 しかし、この決定を不満に思っているのは国民だけではなく、政府も同じだ。

 民主党は国家公務員総人件費の2割(1.1兆円)の削減をマニフェストに掲げており、公約の不履行を指摘されている今、なんとしてでもこれを達成したいはずだ。

 しかし、公約達成のためには、採用枠を削減するだけでは圧倒的に不足で、現役公務員に係る人件費の削減は避けて通れない。そして政府はその実行のための地盤を着々と固めつつある。

 先月23日の江利川人事院総裁更迭はその最たる例だ。「公務員の守護神」として現役公務員達の給与と雇用を守り続けてきた江利川氏の更迭は、現役公務員に対する政府の厳しい姿勢を鮮明に示すものにみえる。

 さらに、今回の再雇用義務化の選択自体も人事院からの定年延長の要請を拒否した結果であることを忘れてはいけない。

 公務員の定年延長案は年金の支給開始年齢が65歳に引き上げられることを理由に昨年9月に提出された。その中身は、給与の7割を保証するもので、これは同様の制度を導入している民間企業の事例を踏まえて設定したという。

 しかしながら、民間企業が給与のピークを越えた最終年収の7割を基準に設定しているのに比べ、公務員はピークが最終年収にあることから、定年延長後も高い給与水準が維持される可能性が高い。

 そもそも、その制度を導入できている民間企業ですら一握りだ。