体育系大学で教えることになって2年目、1年生のクラスを受け持つことになった。22人の初々しい新入生である。
担任の役割は、1週間に1度の導入演習という講義で、大学生としての心構えなどを教えることだ。オリエンテーションで、最初に言ったのは、交通事故に気をつけること、悪いことはしないことの2つ。病院や警察に担任の先生として駆けつけることはしたくない。
緊急時の連絡先として、私の携帯の番号を知らせたら、その翌日から頻繁に電話がかかるようになった。
「次の時間、どこへ行けば、いいんすか?」
「すみません。どなたですか」
「先生のクラスの者っすけど」
「分かった。学科ごとに配られた時間表を見ると、次の時間帯にどんな授業があるか書いてあるはずだけど」
「たくさんあって、どれを選んでいいか分かんないっす」
「そりゃそうだね。でも、ぼくにも分からない」
「マジっすか」
「ごめんね。自分で考えて」
正しい口の利き方を教えるべきか
友だち口調で話すことを「タメ口」と称するそうだ。「近頃の若い奴は、先生に対する口の利き方も知らないのか」とも思うが、就職試験では、それなりに敬語をあやつるし、コンビニのバイトではちゃんと売り子もできる。要するに、先生が敬語の対象になっていないだけのことだろう。
そこで、敬語の対象圏に入れられた方がいいか、タメ口の圏内に入れられた方がいいかと考えると、この歳になると、若い人の友だちでいる方がいいなと思う。