神奈川県相模原市の住宅地の一角にクライムエヌシーデーという従業員30名ほどの小さな企業がある。NC工作機械を駆動するデータを専門にプログラミングする会社として発足した。

 社名にある「エヌシーデー」は「NCデータ」という意味だ。「クライム」は英語で「登る」という意味で、「NCデータの頂上を目指す」という意味が込められているという。

 自動車のボディーや金属製の部品は、金型に鉄板を押しつけてプレス成形する。量産するためにはなくてはならないものだ。金型はすべての製品のおおもとだ。

外国にはマネできない日本の金型づくり

 米国に進出している日本の金型屋の社長さんがこう言っておられた。

 「日本の工場と労働者をそのまま米国に持ってくることができたら、儲かって儲かって笑いがとまらないでしょう。しかし、ここは米国で、働くのは米国人です。そこに限界があります。

 設計図を出して最初に出来上がってくる金型のレベルは日本とそれほど変わりません。しかし、その後プレスの現場と何回かやりとりをしなければならないのですが、その段階で日本の金型はどんどん良くなっていく。米国製はいつまでたっても変わらない。そこで大きな差がついてしまう」

 この事情はアジアでも同じだという。

 かって金型を作る工程は非常に長かった。最初に鋼材をマシニングセンターで削り、上下(オス・メス)の型を彫って合わせる。この合わせる作業が大変だ。

 昔はプレス面にまんべんなく鉛の切片をおいてプレスし、切片がきちんと決められた鋼板の厚さ(例えば0.6ミリ)になるようにした。

 一応厚さを揃えるが、あまりぴったりでもまずい。なぜならプレスをした時に、伸びるところがあるし、縮ませるところもある。がっちり押える場所もあるし、少し緩んでいなければいけないところもある。油溜まりがないと、うまく滑らない・・・。というわけで、これらの微妙な調整が必要だ。

 完全になったところで、試しに鋼板をプレスしてみる。亀裂が出る、皺がよる。・・・即手直し。磨く。プレスしてみる、また手直し。プレス・・・手直し・・・。