この記事は、北朝鮮が沖縄南西諸島の先のフィリピン沖に向けて「宇宙ロケット」名目の弾道ミサイルを発射した4月13日に執筆している。午前7時40分頃に発射されたミサイルは、米早期偵察衛星の情報によると、大気圏を脱したものの第1段ロケットの切り離しができず爆発して四散したとのことだ。韓国国防省や我が国の防衛省もこれを追認した発表をしている。「打上げ失敗」が真相と言えよう。

 ここ数日の日本のテレビニュースは、ミサイル発射準備と並行して進む「北朝鮮建国の父」金日成主席の生誕100周年記念行事(4月15日が誕生日とされる)に向けての作業にあたる北朝鮮の人々の様子や、朝鮮労働党第一書記に就任するなど着々と最高権力者としての体裁を整えられていく3代目指導者・金正恩氏の動向を盛んに伝えてきた。

 さらに南西諸島や東京に展開した自衛隊のPAC3迎撃ミサイルの状況、ミサイルの上空通過を心配する宮古島の市民の声も画面に流れていた。

 我が国では、市井の多くの人々がこの様子を見て「なんて人騒がせで迷惑な国なんだ」と、北朝鮮に対して眉をひそめている。当然のことだ。

北朝鮮が選んできた瀬戸際外交路線

 北朝鮮は、「建国の父生誕100周年」にあたる2012年、軍事面も経済面も政治(統治)面も強い「強盛大国」になると数年前から宣言してきた。実際は、毎年中国や米国などからの食糧援助を受けなければ立ち行かない国情は対外的にも覆い隠せないのだが、国際社会に大きなインパクトを与える弾道ミサイル発射は「国威発揚」に絶好の手段なのである。

 こうした「国威発揚」政策の延長線上には、2010年11月に起きた大延坪島(デヨンピョンド)砲撃事件がある。

 軍事境界線で南北の主張が食い違う区域での米韓演習展開に対し、北朝鮮が「事実上の軍事侵略への報復」と称して、韓国海兵隊演習場のある同島への奇襲的なロケット弾攻撃を行ったのである。北朝鮮のスレスレの冒険的行動は、韓国、米国、日本を驚かすだけでなく、北朝鮮の「後ろ盾」と見なされてきた中国をも驚愕させた。