4月9日、東京の新宿にほど近い大久保のウェスレアン・ホーリネス教団の淀橋教会で、ルワンダ大虐殺の犠牲者を追悼する式典が開催された。

 今年で18回目を迎える式典には、東アフリカ諸国の大使館関係者など110名が集まった。私はルワンダと取引のある企業の代表として招待された。

 1994年のルワンダ大虐殺。国民の10人に1人が殺されるというジェノサイドは歴史上にも類がない。100万人もの人が虐殺されたこの歴史的な事件は、世界中に大きな衝撃を与えた。

 その追悼式典の冒頭で語られた、チャールズ・ムリガンデ駐日ルワンダ大使の示唆に富んだスピーチをご紹介したい。それはアフリカの未来と人類の未来に大きな希望と示唆を与えるものだった。

「ディアスポラ(帰還難民)」たちが成し遂げた驚異的な復興

 少々前置きをしておこう。

 ルワンダと聞いて、その語感からアフリカの一国でありそうなことは何となく分かりそうなものであるが、ではどこに位置するのかきちんと図示できる人はそれほど多くないと思う。世界地図を広げてみても、アフリカ諸国が数ある中でこの小国を見つけることはけっこう難儀だ。

 日本の14分の1の国土に1000万の人口がひしめく、アフリカで最も人口密度の高いこの国は、東アフリカの赤道直下、ビクトリア湖の少し西に位置している。

ゼンショーグループが使用するルワンダのコーヒー粉

 主要な輸出産品である鉱物資源のうちタングステンは世界8位の生産量で、同国の輸出額の3割を占めるが、赤道直下の高地帯という条件を利用したコーヒー豆の栽培も盛んである。

 私が所属するゼンショーグループでは、ルワンダで「民族対立を乗り越える1つのルワンダを目指す」ことを目的としているコーヒー生産者組合に共鳴し、2011年1月から同地産のコーヒーをフェアトレード(注)で輸入し始めた。現在は自社のコーヒーチェーンである「カフェミラノ」のブレンドコーヒーなどに利用しているほか、コーヒー豆としても販売している。

 民族間の対立で100万人もの人が虐殺される事件が起きてから十数年、ルワンダの驚異的な復興は「アフリカの奇跡」と称されている。その原動力となったのが「ディアスポラ(帰還難民)」と呼ばれる人々である。

(注)フェアトレード
途上国で暮らす小規模農家や職人たちの生産品を公正な価格で買い取って消費者に販売することで、生産者の生活向上を目指す貿易・取引および経済の仕組みのこと。