毎日4000人前後の日本人観光客が到着するホノルル国際空港。着陸態勢に入った飛行機の陸側の窓からパールハーバーを見下ろすと、巨大な白い球状の物体が軍艦に交じって湾内海上に浮かんでいるのに気がついた人も少なくないと思う。
これはアメリカ国防総省ミサイル防衛局(MDA)が運用する弾道ミサイル防衛システムのセンサーの一種で「SBX」(Sea-based X-band Radar:海上配備Xバンドレーダー)と呼ばれる巨大レーダーシステムである。
直径36メートルの巨大ドームの中には、有効範囲およそ2800マイル(4660キロメートル)の超高性能レーダーが収まっている。アメリカ西海岸シアトルの球場でイチローが打った野球ボール大の物体を、4400キロメートル離れたハワイ・パールハーバーのSBXは関知することが可能なのである。
このSBXが3月23日にパールハーバーを出港した。国防総省ミサイル防衛局は、今回の出動が4月中旬に強行されるかもしれない北朝鮮の「銀河3号」発射を追尾するためなのかどうかについては「明言できない」と述べ、「弾道ミサイル防衛システムの作戦の一環」とだけ語った。
そして、4月3日にペンタゴンのスポークスマンは、「北朝鮮がアメリカはじめ国際社会の反対を無視して人工衛星打ち上げに踏み切った場合、アメリカ軍は北朝鮮のミサイルを完璧に追尾する態勢を取っている」と語った。
つまり、SBXは、テポドン2号改良型あるいはテポドン3号と見られている「銀河3号」を徹底的に追尾して各種データを得るアメリカ軍の作戦の一環として、西太平洋上に展開しているのである。
アメリカ国防当局は何に関心を抱いているのか
実は、オバマ政権による大幅な防衛予算削減により、2013年度SBX運用費も大規模な削減が決まった。そこで、翌年度以降の予算を少しでも復活させるには、SBXの威力をワシントンの政治家たちに「目に見える形」で見せつける必要がある、といった穿(うが)った解釈も可能ではある。