4月1日より、2年に1度の診療報酬改定が施行されました。今回の改定の中で私が一番驚いたのは、利用率の低迷から効果がほとんど上がっていない「地域医療貢献加算」が「時間外対応加算」と名前を変えて残ったことです。

 「時間外対応加算」とは、診療所が常時24時間365日、患者からの電話による問い合わせに対応する体制を取ると「1人当たり5点(50円)」の加算が算定できるという制度です。

 財源がないのは十分に分かりますが、たったの「50円」で、24時間365日の電話対応だけでなく、緊急時に原則として自ら対応することまでを求めるのはあまりにもコストを度外視しているのではないでしょうか?

 良心的な医療従事者をボランティア労働で疲弊(そして「逃散」)させるだけで、医療崩壊を加速させるだけの制度になってしまう可能性もあるのです。

ほとんど効果がなかった地域医療貢献加算

 2年前の診療報酬改定で、「地域医療貢献加算」として30円が設定されました。この加算を届け出た診療所は、過去に受診した人も含めた全ての患者に24時間365日体制で対応することが求められていました。

 具体的には、医師が自分の緊急時の連絡先を院内に掲示するなど、患者に連絡先を周知します。その上で、「緊急の対応が必要と判断された場合には、医学的に必要と思われる対応を行う」ということです。

 医療を受ける立場から見ると、30円(3割負担として10円)支払えば、かかりつけの診療所に24時間365日電話で対応してもらえ、さらには緊急時の対応までしてくれる主治医を手に入れられるという、素晴らしい制度でした。

 しかしながら、診療所にとって1人当たり30円の収入では、1カ月当たり1万8000円(平均的な診療人数である月600人×30円)にしかなりません。これは、診療所の医師がほぼボランティアで電話対応をすることを前提とした制度だったのです。