2月26日、第84回アカデミー賞が発表された。フランス製白黒サイレント映画「アーティスト」(2011)が作品賞、監督賞、主演男優賞、と主要部門を総なめにしたが、そこに一矢を報いたのが『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011)のメリル・ストリープ。

17回のノミネートを誇るメリル・ストリープ

映画「マーガレット・サッチャー」のメリル・ストリープ

 17回とダントツのノミネート回数を誇る彼女にとって2度目の主演女優賞、助演女優賞を合わせると3個目のオスカー獲得となったのである。

 これまで、演技部門での最多受賞記録はキャサリン・ヘプバーンの4回。それに続くイングリッド・バーグマンやジャック・ニコルソンと肩を並べたことになる。

 ヘプバーンが最後に主演女優賞を獲得した時、ストリープは初めて主演女優賞にノミネートされていた。

 その第54回アカデミー賞の授賞式が行われた1982年3月29日というと、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』でも描かれているフォークランド諸島をめぐる英国アルゼンチン間の戦いがまさに始まった頃である。

 もっとも、その時、多くの英国国民の関心は、はるか南方に浮かぶ小さな島々よりも、すぐそばにある英国王室に向けられていた。

「征服者」ウィリアムに浴びせられた罵声

アカデミー賞 主要部門を独占した「アーティスト」。日本では4月公開予定。後日改めて紹介します

 婚約、結婚以来、大フィーバー(当時はまだこの言葉も旬だった!)が続いていたダイアナ王太子妃(当時)が第1子出産を間近に控えていたのである。

 そして、6月21日、無事ウィリアム王子が誕生した時には、フォークランド紛争は既に終結して1週間が過ぎていたのである。

 時は流れ、紛争終結後30年となる今、そのウィリアム王子がフォークランド諸島に滞在している。2月初めから6週間の予定で、所属する英空軍のヘリのパイロットとして派遣されているのである。

 この派遣が最初に発表された時、当然のように、アルゼンチン外務省からは、不快感もあらわな「挑発行為だ」とのコメントが発せられた。赴任時には、「征服者の制服で到着」と表現した閣僚さえいたのである。