米ワシントンで今、興味深い訴訟が進行している。
昨年末、米政府が秘密裏にツイッターやフェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の情報を監視し、集積していた事実が発覚したのだ。
利用者の個人情報まで収集
連邦政府機関の1つである国土安全保障省(DHS)が税金を使ってSNSに対し、いわば「スパイ活動」を行っていたのである。
昨年12月、民間の電子プライバシー情報センター(首都ワシントン)という団体がこの事実をつかみ、同省を相手取って訴訟を起こした。
同省はその事実を認め、同センターは情報公開法を使ってDHSが集積した3000ページに及ぶ情報を公開させた。
今年2月現在、フェイスブックの利用者は全世界に約8億4500万人、ツイッターは昨年6月段階で3億5000万人に達している。対象は米国内の英語サイトだが、世界中に及んでいる可能性もある。
同センターがつかんだ情報では、DHSはソーシャルネットワーク上で交わされる書き込み情報だけでなく、投稿者の個人情報も集積していた。さらにSNSだけに収まらず、ウェブマガジンやブログにも手が及んでいる。
しかもDHSは省内でこのスパイ活動を行っていたわけではない。外注していたのだ。外注先は防衛宇宙複合企業のジェネラル・ダイナミクス社である。情報は政府内だけでなく、民間に流れる危険性を秘めている。
同社は軍需産業で6位に入る大手で、ウェブサーフィンが得意な技術者を多く抱え、膨大な情報をまとめ上げられる技術力を買われて契約が交わされた。米政府が同社に支払った「スパイ活動」予算は昨年だけで1150万ドル(約9億2000万円)に上る。
この事実が今年に入ってから連邦議員の耳に入り、2月中旬、連邦下院議会の国土安全小委員会で公聴会が開かれた。下院は現在、共和党が過半数を占めるが、公聴会では民主・共和両党が「こうした活動は不適切」と声を揃えた。DHSから担当者を召喚して糺している。