北朝鮮の核兵器開発問題に関する重大な危機がひたひたと迫ってきた。米国や日本にとっても、これまでの北朝鮮核武装阻止の努力を粉々に砕きかねない事態の切迫なのだ。その危機は東アジア全体の安全保障情勢を根底から変えることにもつながっていく。
その危機とは、北朝鮮がついに核弾頭を中距離や長距離のミサイルに装備するという事態である。この事態こそ、北朝鮮核問題に関して米国や日本が恐れながらも現実と見ることを拒んできた真の危機だと言える。
「北朝鮮の核武装」といっても、開発した核兵器を兵器として潜在敵に対して使用できる能力がなければ、現実の意味はない。今のところ北朝鮮は核爆弾は持っていても、それを運搬する手段までは開発していないのだ。
だが、中距離や長距離のミサイルにその核弾頭を装備して発射できるとなれば、真の核武装となる。その意味では、北朝鮮核武装の「真実の時」がいまやすぐそこまで迫ってきたのである。
あと1~2年のうちに核弾頭を弾道ミサイルに装着
そもそも北朝鮮の情勢を一体どう読めばよいのか。その作業はますます重要、かつ難題となってきた。
金正日総書記の死後、後継の金正恩政権は当然、波乱が予想される。未経験の若者がカルト的独裁の父のパワーをうまく継げるのかどうかは、まったく予断を許さない。その新リーダーを支える当面の集団指導体制も行方が読み難い。特に新指導部は対外的にどんな政策をとるのか。
日本へのその影響も重大である。なにしろ日本は日本人拉致や核兵器開発で北朝鮮の動きには激しく揺さぶられてきたのだ。
北朝鮮の動きでは、いま日米両国では、金正日総書記亡き後の政権の政治動向に集中的な関心が向けられている。金正恩氏に果たして統治の能力があるのか。同氏が実権を振るえない場合、誰が真の権力者となるのか。そんな疑問の読みである。その作業の中では、核兵器の動きへの関心はやや脇に押しやられた感じさえある。
だが、米国のオバマ政権の内外の専門家の間では、北朝鮮が長年の目標としてきた核弾頭の弾道ミサイルへの装着をこの1~2年のうちについに達成するだろう、という予測がひそかに強まってきた。