ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用者の増加に伴い、これを企業のマーケティング活動に使おうという動きが高まってきている。
何らかのSNS関連のビジネスをしているプレイヤーは、当然ながら無限の可能性を語る。一方でSNSをバズワードだと一刀両断する評論家もいれば、数年前にはやった「ウェブ2.0」のように一過性のブームに過ぎない、と言うコンサルタントもいる。
それらが正しいか正しくないかは結果論である。いま我々にできるのは、落ち着いて世間の声に惑わされず現実的な判断をすることに尽きる。
そういう観点から、ある企業が検討した結果を参考に、企業のマーケティング活動におけるSNSの可能性を考えてみたい。
SNSから「顧客情報」は得られないという結論に
A社は建築用資材の製造・販売を手がけている。これまでのCRMへの取り組みの中で、メイン顧客である建設業界の数万件の顧客情報を蓄えた。A社はそれらをデータ化し、各種のマーケティング施策や営業活動に役立てている。
同社の顧客情報は住所や規模などの基本情報にとどまらず、現場から吸い上げた製品の利用状況や取引履歴、ニーズ、購買特性などの生きたデータも含まれる。
ここでCRM担当者はある仮設を立てた。「我々の周りでも、みんなフェイスブックを使うようになってきた。お客さんも使っているだろう。フェイスブックを通してお客さんの興味や関心を拾い上げれば、よりタイムリーで課題解決につながる提案や商品開発をしていけるはずだ」
SNSに書き込まれた情報を「顧客情報」と捉えて顧客をプロファイリングし、顧客セグメントやニーズの把握・分析に役立てようというアイデアだ。