本流トヨタ方式の土台にある哲学」について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」という4項目に分けて説明しています。

 企業を取り巻く利害関係者との関係を表す「(その3)共存共栄」は、本流トヨタ方式の根幹とも言える考え方であり、行動規範でもあります

 前回までに、企業として第2優先に取り組むべき関連企業との関係や、地域、環境の話に入り、手始めとして関連企業との商取引について説明しました。

 本流トヨタ方式では、関連企業との取引は全く対等の立場で行い、トヨタではできない難しいことや、量の確保のできない部分を手伝っていただくというのが基本的な考え方です。そして、次の5項目で表す心構えがあることを話しました。

(1)グループ会社はトヨタ以外の客先と取引を進め、量産効果を出すべし
(2)外部との「コンカレントエンジニアリング」で効率よく新車を開発すべし
(3)内製・外製の判断は、経営トップの判断で決めること
(4)新製品や難しいモノは外注に出すな
(5)やさしいモノでも2割は残せ

本流トヨタ方式における「調達」の3つの基本方針

 ここで前回までの補足として、「調達」には次のような3つの基本方針があることをお話しします。

【基本方針1】 オープンで公正な競争を目指す。

 トヨタの調達は、一時は「系列」という閉ざされた中で行われているとの批判もありましたが、国内のみならず世界に向けて門戸開放しました。

 同年、「国籍・企業規模・取引実績」の有無を問わず「オープンで公正かつ公平な参入機会」を提供し、新規参入しやすいように、1998年にはトヨタ本社内に「サプライヤーズセンター」を設立しました。この建物には大小いくつものプレゼンテーションルームがあり、世界中のサプライヤーがサンプルを携えて来場し、売り込みを図っており、ミニ見本市の体をなしています。

【基本方針2】 サプライヤーとの相互信頼に基づく共存共栄を目指す。

ただ単に「今、安いから取引をする」という考え方はしません。あくまでも長期的なビジョンの中で共存共栄の取引を目指します。

 自動車は摺り合わせ型産業の代表であり、各サプライヤーの持てる技術を全面的に駆使して完成車にまとめ上げないと、世界で通用する車にはなりません。厳しい戦いを共にやり抜くチームメイトに対する相互信頼が、何より大切になるのです。