納税者のだれもが確定申告をすることが日本の民主主義を作り直す第一歩である。なにを極端なことを言っているのかとお思いだろうが、前年分の所得税の確定申告をするこの時期を迎えるにつけ、ここ数年はますますその思いが募る。

 社会保障、税金、原発など国が抱える問題が山積するなか、社会を変えるのは基本的には個人個人の自立した意思でしかない。その意味で組織や国に“おんぶにだっこ”ではない、自立した個人であることが求められるのは言うまでもなく、その基本は、自分の税金は自分で管理し確定申告として支払うことだ。

 働くものは、その稼ぎ(所得)に応じて、税金(所得税)を払う。当たり前のことだ。しかし、その税金をなぜどのくらい払うのか。払わなくてはいけないのか、少しでも少なくする(脱税ではなく節税する)にはどうしたらいいのか。こういうことに頭をめぐらすのは確定申告をするからである。

確定申告は税のことをいろいろ教えてくれる

 と同時に、申告のための書類(申告書)のなかにある数字を埋めていく過程で、いろいろなことを理解し、ときに疑問を感じ、ときに怒る。しかし、日本ではこの確定申告をするのは自営業者などであり、給与所得者は、給与収入以外の収入があったとか、高額な医療費を1年間に支払ったなど、特別なことがなければしない、というかする必要がない。

 “サラリーマン”(この場合女性も含めて)の所得税は、源泉徴収という制度によって、毎月給与から引かれている。あえて、単に「引かれている」と表現したのは、その程度の認識しかない若い人が多いと想像するからだ。

 正確に言えば、会社が社員の給与から差し引いてこの社員に代わって毎月国に納めている。会社員にとっては助かるし、国にとっては税金を徴収する手間が省けてこんなに都合がいいことはない。さらに年末には、「年末調整」といって会社は、払いすぎた税金の還付の手続きの代行までしてくれる。

 本来納めるべき所得税は1年単位であり、1年の最後になって、その年の所得が確定しないと分からない。その年に支払った社会保険料など所得から控除されるものがあるからだ。同様に扶養する家族が年内に増えた場合も一定額が控除される。もちろん逆に課税所得が増える場合もある。

 一方、毎月、所得税はこうした事情を考慮することなく源泉徴収されているので、最後に調整(精算)しなくてはいけない。こうした事務手続きを会社が代わりにすべてやってくれるのだ。

 源泉徴収の制度はほかの国にもあり、年末調整制度もあるが、税務の専門家によれば、日本のように細かく面倒見がいい制度はないという。会社員なら経験があると思うが、年末が近づくと“総務”といった部署から「必要書類を出してください」などと年末調整の案内が来て、「なんかよく分からないが税金が戻ってくるかもしれない」と、必要な書類を提出していることがあるのではないか。