今回はいつもと少し趣向を変えて、東京から北海道道東地域まで片道1400キロメートルほどをクルマで一気に走って「遠征」してきたお話から。

 途中、津軽海峡だけはフェリーを利用して、その乗船準備から対岸に到着するまでが4時間あまり。それ以外の時間はほぼ走り続けることで丸一日かからずにこの距離を踏破できた。

 以前、千葉の銚子から青森の大間崎まで、太平洋岸をずっと走り続けて北海道に渡る、というルートを旅したこともあって、2011年の地震と津波の時には現地の映像を見るたびに、その旅で目にし、写真に残した集落や自然が痛々しく傷ついていること、そしてとりわけ三陸沿岸を南北に縦貫する国道45号線が寸断され、それぞれの地域集落の生活も窮地に追い込まれるであろうことに心が痛んだ。また同じ「沿岸・岬めぐり」の旅をする機会をつくりたいものだと、ひたすら東北道を走り続ける中で思っていた。 

 その東北道も、福島県白河あたりから北に向かう中で、路面にはうねりが増え、ひび割れや路肩崩落の補修跡が急に増える。舗装を打ち直すだけでは無理で、もともと土盛りして作った路床を直すところから始めなければならないだろう、という大きな路面変形も次々に現れる。片側1車線をふさいでの大規模補修も各所で始まった、と聞いていたのだが、今回、1月末に通る中ではそうした車線規制にはほとんど出合わなかった。ご承知のように今年は雪が多い。それを除雪し、融雪剤を撒き続ける必要がある間は、本格的な再建工事は進められないはずだ。

 付け加えておくなら、幸いにも我々のこの「北海道遠征」は降雪が一息ついていた時期であり、また豪雪地帯からは外れていたので、除雪車の背後でゆっくり走り続けたり、さらには雪に閉じ込められるような事態には出合うことなく走りきれた。

 その中で、除雪・融雪は北海道がさすがに行き届いていて、特に高速道路、国道や主要道は降雪に対する反応が早いとか、それに比べると青森県は降雪直後ではないのに路面に残る雪が多く、県境を越えると気候、例えば雪の量とともに路面の様子も変わる、といった地域それぞれの道路管理、雪対策の状況も実感として伝わってきた。

氷上ドライビングトレーニングで学生にコーチ

 そもそもなぜ北海道のまん中あたりまで「走って」行ったのか。その話をしないといけない。目的は、「ドライビングトレーニング」。その最良の場が「氷の上」。思い切り氷の上を走る舞台を求めて、大雪山系の懐深く、河東郡上士幌町糠平まで出かけていったのである。

 そこに糠平湖というダム湖があり、もう34年にもわたって毎冬、「糠平湖氷上タイムトライアル」という自動車競技が開催されている。そのイベントの時に「練習会」も行われていて、そこで私自身が、そして仲間たち、特に学生フォーミュラ大会で自ら設計・製作したマシンを自ら走らせる大学生・大学院生諸君が「ドライビングというスポーツ」のトレーニングを積む。そのための往復2800キロメートルだった。

全面結氷した湖の氷上に作られたコースを駆ける。滑るから面白い、だけではない。ドライビングによって車両の運動を刻々と作ってゆく、その段取りをどう組み立てるか、それが正確にできていないとクルマは思い通りには動いてくれない。そこが「スポーツ」として何より難しく、だからこそ面白いのである。もちろん、スタンスとグリップ、そしてフォームがちゃんと身についていないと、手足を正確なタイミングと量で動かすことはできない。そうしたことの全てを洗い出し、トレーニングする場なのである。(筆者撮影、以下同)