インドの首都ニューデリー郊外のインディラ・ガンジー国際空港からタクシーで30分ほど行くと衛星都市グルガオンに着く。
そこには外資系の大きな看板を掲げたビルやショッピングモール、また、瀟洒なマンションが立ち並んでいる。グルガオンはBRICsの一角として注目されるインドの発展を象徴する街と言ってよいだろう。
衛星都市の方が開発が進んでいるのはなぜか
グルガオンとニューデリーの間は地下鉄で結ばれている。電車は数分に1本あり、約40分でニューデリー中心部に行ける。
この地下鉄に乗ってみて奇妙なことに気がついた。朝の通勤時間にニューデリーの中心部からグルガオンに向かう電車が満員になっているのである。反対にグルガオンからニューデリーに向かう電車はそれほど混んでいない。多くの人が首都から衛星都市に通勤している。
ニューデリーの街を歩くと、その理由がすぐに分かった。経済成長に伴い官庁街のある中心部の整備は進んでいるが、官庁街からちょっと離れた場所には汚れた家が立ち並び、道路にごみが散らかっている。そこには、これまで見慣れたインドがあった。
急速な経済成長を遂げながら首都の中心部の開発は思うように進んでいない。
それはインドが世界最大の民主主義国家であり、土地の強制収容などが難しいからであろう。同じ新興国でも中国の土地は公有制であるために、権力による土地収用が容易だ。貧民窟を取り崩して急速な開発が進んでいる。
土地収用が難しいインドではグルガオンのような衛星都市を造り、そこに大企業のオフィスや工場を建設している。これが、人々が中心部から郊外へ通勤する理由である。