日本が大きな衝撃を受けた2011年。年の瀬が迫る12月12日に開催されたエコノミスト・カンファレンス『ジャパン・サミット2011』は、「現状維持の代償」をテーマに、政府関係者、企業経営者、研究機関やNPO関係者などが、日本が直面するさまざまな課題について討論を行った。
今日から8回にわたってお届けする『ジャパン・サミット2011』各セッションのリポート第1回目は、『再考:日本にリーダーは必要か?』。リーダーシップ不在の日本の政治と国民の意識の問題が議論された。
パネリストは、衆議院議員・自由民主党前政務調査会長の石破茂氏、一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授の近藤正晃ジェームス氏、上智大学国際教養学部教授の中野晃一氏、司会はエコノミスト誌東京支局長のヘンリー・トリックス氏。
「国家主権」を教えず、学ばずに来た日本
司会 リーダーシップが、特に国の政治というレベルでなかなか発揮されない。そこが日本の困った現状かと思います。まずは石破さんからご意見をお聞かせください。
石破 リーダーシップの大前提として、政治家は国民に真実を語らなければいけません。しかし日本の政治家はこれまで、票が減るのを恐れて真実を語らずにきました。これは極めてよくないことです。
一方、国民の側も政治家が勇気を持って真実を語ったときには、それを真摯に受け止めて判断しなければなりません。消費税率のアップしかり、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)しかりです。
今の政治が混迷しているのは、政治家も有権者も、真実は何かを見極める努力をせず、真実を受け入れる覚悟を持たないからです。
政治がよくないというのは、政治の側だけの問題ではありません。国民主権なのですから有権者に知らん顔をしてもらっては困る。こういうことも悪評を買うからだれもはっきり言わないという、非常によくない循環が起こっていると思います。
今こそ政治と有権者の間の信頼関係と緊張関係を取り戻さないと、この国はそう長く続かないでしょう。
近藤 アメリカやヨーロッパでも見られる現象だと思うのですが、政治家のメッセージが国民に伝わりにくいのは、今の環境も関わってのことだと思います。
ひとつには深刻な経済状況です。打ち出す政策といえば、税率のアップや支出の抑制といったことにならざるをえず、みんながすぐに賛同してくれるようなメッセージを出せない。それもあって、いい政策といい政治がスムーズにリンクしないのではないか。