「週刊NY生活」 2012年1月1日 378号より
国際食になったすし すし屋が「B」をもらうとは
1970年代後半に始まったすしブームは全く衰えを知らない。こうなるともう「ブーム」という一過性のものではない。「定着」と言った方が適切だろう。
ステーキの「紅花」がすしを始めたのはずっと以前のことだったが、最近ではあの「吉野屋」が牛丼と並べてすしを売っている。
韓国人や中国人をはじめ、アメリカ人、南米人、ヨーロッパ人などが経営するすし店が、日本人経営の店をはるかにしのいでいる。
それで従来の「すし」という枠にとらわれない新種のすしが続々と誕生している。フルーツやチョコレートを巻いたスシロールをはじめとして、ロールずしは中身は何でもありの世界になった。
「スシドッグ」も出現した。中国人経営の店である。すしめしをホットドッグのバンズのような形に固め、パン粉をつけて揚げる。
これを2つに割ってスパイシーなマヨネーズソースで和えた生のまぐろやサーモンをはさむ。
そういえばハワイの「すし道楽」で似たようなすしを食べた。こちらはまぐろなどをロールに巻いてからパン粉をつけて揚げ、切って上からソースをかける。だから中の魚は生ではなく火が通っているので食中毒の心配はない。
ニューヨークでは2010年夏から店の衛生状態をランク付けする制度が始まったが、すしを出している店に「B」の表示が出ているところがある。魚をよく知らない人が見様見真似ですしを作っているのだからこわい。
保健局が「手袋をしてすしを握れ」と厳しく指導するようになったのも無理はないか。なお、ドイツではすでに法制化されているが、「すしに使う魚は一度冷凍しなければならない」とも保健局は考えているようだ。伝統の江戸前ずしがだんだんと遠のいていく。
ラーメン、トーフ、スモーク醤油 新たなチャレンジも
やはり1970年代後半だが、日本から「どさん子」ラーメンが進出してきて、NYにラーメンブームが起こったが、やがて下火になった。
だから今のラーメンブームは「第二次」と言ってよい。04年11月にニューヨークタイムズ紙がラーメン特集を組んだのが、この第二次の始まりのようだ。日本から有名店が続々とNYにやって来たが、さすがにNY、オーガニックラーメンが現れた。
マクロビオテックの「ソウエン」がオーガニックの小麦粉を使い、動物性だしを使わないラーメンをつくり出し、ニューヨーカーの人気を得ている。最近ではおむすびの専門店「オムス・ビー」もラーメンを始めた。
また、ハワイの大きな麺メーカー「サン・ヌードル」はNJに麺工場を作ったし、京都市の「創味食品」では、業務用ラーメンスープのアメリカ輸出に本腰を入れるという。