昨今のIT投資で最初に出てくるキーワードが「クラウド」ではないだろうか。

 ユーザー企業では経営的な視点から、東日本大震災の後、BCP(事業継続計画)対策の一環として、社内にあるサーバーやシステムをまるごと、あるいはバックアップをクラウド上に置くことを検討している、という話はよく聞く。

 筆者はXML DBの提供やWebサイトの構築といった、いわばITプロダクトやサービスを提供する側の企業を経営している。しかしながら経営者という立場では、ユーザー企業としてどうITを活用するかという問題に向き合わなければならない。今回はそういった視点から考えてみたい。

ファイルサーバーのクラウド移行を検討したが・・・

 「東北地方太平洋沖地震」直後のオフィス内はどうだったのか。東京都内にある当社の本社オフィスでは、什器備品などが倒れ、社内にあるサーバールームの中では、設置していたサーバー類のいくつかが横倒しになった。

 特に社内データの大半を保管するファイルサーバーは、倒れた影響で停止状態になっていた。幸い破損は免れたが、古いファイルサーバーだったこともあり、また余震も続いていたことから、何か対策を打とうということになった。

 真っ先に検討された一番手軽な対策は、クラウド環境にファイルサーバーを移管することだった。

 よくある流れだが、すぐに移管することはせず、自分たちで部分的に試してみて、その後本格移行させるかどうかを判断しようということになった。具体的には、営業サイドや管理サイドで実際に運用している共用部分の一部をクラウドに移し、一定期間のテスト運用を行った。

 テスト運用の個人的な感想としては、データが社内LANの外側にあるので当然なのだが、社内から該当ファイルにアクセスした際のスピードの遅さがやはり気になった。

 日々の業務時間におけるタイムロスの合計と比較すると、バックアップをしっかり取って社内管理しておいた方が、いざ止まったとしても、復旧までの業務停滞時間は少ないのではないか。つまり、クラウドに移行しない方がよいのではないか。ただ、私がファイルサーバーを使う頻度は低いので、実際に使っている社員たちの考えで決めればいいと考えていた。