北朝鮮・金正日総書記の突然の死去は、東アジア情勢に大きな波紋を投げかけた。今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)は、北朝鮮を訪れた経験がある番組ホストの中山泰秀氏が、今後の北朝鮮をめぐる米中の動向や日本のあり方について語った。

北朝鮮は権力継承を意地でも成功させる

中山 金正日総書記の死去後、「金王朝」3代目の後継者として金正恩氏の名が挙げられています。北朝鮮は金日成氏、金正日氏、金正恩氏と3代にわたり世襲共産主義を行うことになりますが、本来、共産主義では世襲が認められていません。

中山 泰秀(なかやま・やすひで)氏
前衆議院議員(自由民主党所属)。1970年大阪市北区生まれ。電通勤務を経て政治の道へ入る。2003年衆議院総選挙で初当選、2007~2008年8月まで外務大臣政務官を務める。(撮影:前田せいめい)

 かつて金日成氏は、旧ソビエト連邦に対し「北朝鮮で共産主義を伝播するには、北朝鮮独自の儒教の精神に則って世襲する必要がある」と訴え、金正日氏に権力を継承した経緯があります。

 その金正日氏の後を継ぐ金正恩氏に対して「兵役経験がないため軍部の掌握が難しく、北朝鮮を上手くコントロールできるのか?」という見方がありますが、私はできると思います。

 北朝鮮はプライドや面子を重要視する国家ですから、恐らく「権力継承時の不安定な状態を外に見せることは恥だ」と考えるはずです。ですから、仮に内情では軍部とのバランスが悪くても、継承のテーマである「国家護持」を貫き、意地でも上手くいかせるのではないでしょうか。

北朝鮮情勢をめぐる米中の思惑

 米国で「中国が北朝鮮を省の一部として扱うのでは」という見解を示すメディアがありますが、実はここがきな臭い。北朝鮮がどんな方法で開国することが、中国にとってメリットなのかを考えてみる必要があります。

 香港とマカオが返還されて以来、中国の経済はハイブリッド型になりました。これ以降、東の太平洋側を除く北・南・西側が中国包囲網のような形になり、アメリカを含めてミリタリーバランスが微妙になった。

 中国としては、北朝鮮を「チャイナナイズド」し、中国的な民主化で鎖国状態を解くことでソフトランディングさせたいと考えているのではないでしょうか。北朝鮮が米国、韓国、日本などの自由主義諸国側に近づくことは中国にとって痛いでしょうから、それを阻止しようという狙いがあると思います。