経済学者の竹中平蔵氏が、自ら実践してきた勉強法を綴った。経済学に関する書籍はあまた書いてきたが、個人のスキルアップに関する本の執筆は初めて。世界経済が激動する中で、日本人は今こそもっと勉強すべきだと唱える。グローバル時代の勉強の極意を竹中氏に聞いた。(聞き手は鶴岡弘之)

──勉強法について本を書かれたのは初めてだとか。この本を書いた狙いについて教えてください。

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竹中 勉強は、始めるまでが大変なんですよね。「勉強しなくてはいけない」という思いはあるんだけど、何を勉強していいか分からないという人は多いのではないでしょうか。そういう人は、自分が今どんな状況に置かれているのか、何をやりたいのかが見えない。だから、何を勉強すべきかが分からない。勉強を始めるためには、意味づけを明確にすることが大切なんですよね。

 私が昔から感じていたのは、勉強には「天井のある勉強」と「天井のない勉強」があるということです。天井のある勉強の典型が受験勉強です。合格すればそれで終わり。一方で、文学的な教養を身につけるとか、コミュニケーション能力を高めるといった勉強もある。そうした勉強には天井がありません。経済の勉強なんてまさにそうだし、社会の勉強もそうですよね。

竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)、竹中平蔵著、950円(税別)

 さらに勉強は、「人生を戦い抜く武器としての勉強」と「人間力を鍛えるための勉強」に分けることもできる。英語を特訓したりMBAに通うのは、ライバルに打ち勝つための武器となる勉強です。一方、ワインの奥義を勉強したり、世界の古典文学を読んだりするのは、人間力を高め、人生を豊かにするための勉強になります。

 そうした勉強の軸をこの本ではマトリックスにして示しました。そうやって勉強の区分をはっきりさせることは、勉強の姿勢を作るうえで極めて重要だと思います。

 自分が勉強法について語るなんて、ちょっと気恥ずかしい部分もあったんです。でも、勉強というのは本来楽しいものですよね。自分が成長していくという喜びがあるし、今まで知らなかったことを知るのはとても楽しいことです。自分なりに試行錯誤してきたことを取りまとめて、いろいろな人に勉強の喜びを味わって欲しいという思いで、この本を書きました。