4月12日、核セキュリティーサミット出席の機会に胡錦濤国家主席はオバマ大統領と1時間半も会談を行ったという。気の早い内外メディアは、年初来「ギクシャク」していた米中関係が「修復」し始めたことを印象づけた、などとまたぞろ報じている。
米中関係を「ミクロ」の視点でしか見ない情勢分析など日々の新聞報道に任せればよい。ここでは、前回ご説明した核、イラン、人民元を巡る米中首脳レベルの政治的「取引」がその後どうなったかについて、「マクロ」の視点から考えてみよう。
戦略的に動いた中国
前回お読み頂いた読者には一部重複となるが、まずは過去1年間の米中関係をもう一度振り返ってみたい。特に、4月9日のガイトナー訪中と12日の米中首脳会談が重要である。
2009年
3月4日以降 南シナ海で中国艦船が米海軍調査船の航行を妨害
7月27~28日 米中戦略・経済対話、ワシントンで開催
11月15~18日 オバマ大統領訪中
12月7~18日 気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)
2010年
1月12日 グーグル、中国市場撤退を示唆
1月29日 米国、台湾に対する武器売却を発表
2月18日 オバマ大統領、ダライ・ラマと会見
3月14日 温家宝首相、人民元切り上げを拒否
3月24日 中国、対イラン追加制裁協議に参加
4月1日 中国、胡錦濤国家主席の「核安全保障サミット」出席を発表
4月2日 オバマ大統領・胡錦濤国家主席、約1時間の電話会談
4月3日 ガイトナー財務長官、「為替操作報告」議会提出の延期を発表
4月6日 米政府、核態勢の見直し(NPR)報告を発表
4月8日 オバマ、メドベージェフ両大統領、プラハで新核軍縮条約に調印
4月9日 ガイトナー財務長官、急遽訪中し空港で王岐山副首相と会談
4月12~13 日 核安全保障サミット開催(ワシントン)、12日に米中首脳会談
中国側のオバマ・テスト
「中国株式会社」にとって米国は最重要の取引先であり、最強のライバルでもある。その「America Inc.」に昨年若く未経験の「新社長」が就任した。中国はこの新人CEOを様々な機会に「テスト」してきたのではなかろうか、というのが今回の仮説である。
前回同様、ここからは過去1年間の「オバマ・テスト」に関する中国共産党指導部の思惑を推測してみたい。もちろん、これらはすべて筆者個人の勝手な独断と偏見である。