対イラン安保理追加制裁、NPR(核態勢見直し)、人民元切り上げ――いずれも2010年、筆者が特に強い関心を持つ中東、米国、中国の重要課題である。
日本のマスコミでも、政治、軍事、経済各分野の専門記者がこれらを詳細に報じてきた。
素人には、それぞれが地域も分野も異なる別個の問題のように見えるかもしれない。しかし、米中政治指導者の頭の中では、すべてが1つの「政治的取引」に収斂しているのではなかろうか。
今回は筆者がそう思う理由をご説明しながら、国際政治における中国式発想のダイナミックさについて考えてみたい。
米中最大の課題は人民元
昨年米中関係は「米中G2蜜月」などと大いに持て囃された。しかし、地球温暖化を巡る年末のコペンハーゲン第15回気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)会合あたりから、両国間で立場の違いが表面化し始める。このことは、本コラムでもたびたび取り上げてきた通りだ。
今年1月以降は、グーグル問題、台湾への武器売却、ダライ・ラマ訪米など、米中関係をギクシャクさせる問題が頻発するようになった。しかし、中国にとって戦略的に最も重要な課題は、何といっても「人民元切り上げ」問題である。
米財務省が議会に対し主要国の「為替操作」について報告書を提出する期限は、当初4月15日だった。ところが3月に入り、米議会では人民元を巡る対中圧力がますます高まっていく。この危機的状況の中で中国はどう対応したのだろうか。
戦略的に動いた中国
対イラン制裁、NPR、人民元に関する過去1カ月の報道をもう一度振り返ってみよう。それぞれの項目は独立しているように見えるが、実は相互に密接に関連していると思われるので、注意してお読みいただきたい。