糸井重里さんが主宰するウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」(以下「ほぼ日」)は、1日のページビューが150万以上あるという。これはもう間違いなく「大メディア」である。

 だが、「ほぼ日」はどうも大メディアらしくない。

 それは、大手新聞やテレビなどの大メディアとは、まったく次元の異なる切り口で世の中の出来事を伝えているからだ。

 まず、視点が違う。一般的な大メディアが、大きな目のザルで日々のニュースをすくい上げているとすれば、「ほぼ日」はザルの目に引っかからないような、見過ごされがちな出来事や人物を拾い上げる。そして、実はそこにとても大切なものや、大きな価値が潜んでいることに気付かせてくれる。

 さらに、「ほぼ日」は思考の深さが違う。大メディアにありがちなステレオタイプによる決め付けや思い込みがない。「ほぼ日」は、糸井さんの言葉を借りれば、取り上げる対象の本質についてそれこそ頭から血が出るくらいまで思考を巡らせて、自分たちの言葉でコンテンツを作っている。

「ふつうの人」たちによる被災地の物語

 そんな「ほぼ日」が、新しい本をつくった。タイトルは『できることをしよう。─ ぼくらが震災後に考えたこと』。

できることをしよう。─ぼくらが震災後に考えたこと』(糸井重里・ほぼ日刊イトイ新聞著、新潮社、1400円、税別)

 東日本大震災以来「ほぼ日」に掲載されてきた震災関連の記事に、糸井さんへのインタビュー記事を加えた本である。

 本書には、被災地を支援する独自の活動をしている人たちや、白紙の状態から復興に向けて奮闘している被災者たちが登場する。

 これらの人たちの物語が、やはりとても「ほぼ日」らしくて、面白い。

 登場するのはみんな「ふつうの人」たちである。歴史に残るような大仕事をしているわけではない。泣ける美談が語られているわけでもない。

 しかし、なぜか胸を打つ。読んでいると知らないうちに元気が出てくる。何かをやってみようという気になってくる。

 こんなに肩の力が抜けている本なのに、なぜ元気が出るのだろう。この本の不思議な魅力の秘密を知りたくて、糸井さんに会いに行った。

 以下、そのインタビューの模様をお届けする。(聞き手:鶴岡 弘之)