欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会(EC)は6日、米アップルと欧米の大手出版社5社が電子書籍の価格を巡って不当な協定を結んでいた疑いがあるとして、正式調査に着手したと発表した。
大手出版5社とアップルを徹底調査
調査対象となるのはアップルのほか、仏アシェット・リーブル、米ハーパー・コリンズ、米サイモン&シュスター、英ペンギン、そして英マクミラン・グループの親会社である独ゲオルク・フォン・ホルツブリンク。
欧州連合の競争法には、商取引に影響を及ぼしたり、競争を制限、阻止したりする協調行為を禁じるEU機能条約があり、欧州委員会によるとアップルと出版5社は欧州経済領域でこれに抵触した疑いがあるという。
欧州委員会は今後、アップルと出版社が違法な契約を結んでいたかどうかを追及するほか、出版各社がほかの書店と結んだ契約内容についても詳しく調査するとしている。
欧州委は今年3月にEU各国の関係企業に抜き打ちの立ち入りを行うなどして、予備調査を進めていたが、今回さらに調査が必要と判断、正式調査を決めた。
アップルがもたらした新たな契約形態
実はこうした価格協定を巡る懸念は米国でも取り沙汰され、コネティカット州やテキサス州の司法当局などが調査している。これは米アマゾン・ドットコムやアップルがそれぞれ「キンドル(Kindle)」「アイパッド(iPad)」で電子書籍販売を始める前には存在しなかった問題だ。
書籍の販売は従来、出版社が書籍を書店に卸し、価格は書店が自由に決めるという「卸売りモデル」で成り立っていた。
ところがアマゾンがキンドル端末の販売戦略の一環として、赤字覚悟の破格値で電子書籍の販売を開始し、このことに出版社が不満を抱くようになった。
電子書籍の登場で、印刷書籍が脅かされることに加え、アマゾンの低価格路線で、今後恒久的に電子書籍の価格が低下するのではないかと懸念したからだ。