2011年12月1日は、韓国のメディア業界が大戦国時代に突入した日として記録されることになるだろう。この日、韓国で一気に4つのテレビ局が開局したからだ。
韓国政府は「グローバルメディア企業を育成する」と目論むが、すでに激しい広告争奪戦が始まり、新聞とテレビ業界を巻き込んだ生き残り競争の幕が切って落とされた。
新放送局はすべて大手新聞系
12月1日に開局したのは、いずれも大手新聞社が大株主になっているjTBC(大株主・中央日報)、朝鮮TV(同朝鮮日報)、チャンネルA(同東亜日報)、MBN(同毎日経済新聞)の4局だ。
いずれもCATVなどに番組を供給する放送局だが、放送業界で大きな影響力を持つと見られている。
その理由は、第1に、マンション(韓国ではアパートと呼ぶ)など集合住宅への居住比率が高い韓国ではCATVの普及率が80%以上に達しているうえ、この4局についてはCATVでの放送が義務付けられていることだ。さらにこの4局には、地上波チャンネルと近いチャンネルが割り当てられ、視聴者にとっては地上派放送局が増えたのと変わらないことだ。
第2には、母体企業が大手新聞社で、報道番組の制作や広告獲得である程度のノウハウがあることだ。
第3には、4局とも、報道や娯楽、スポーツなどあらゆる番組を制作することができる「総合編成チャンネル」であること。CATV向け番組供給業者についてはこれまで、報道、スポーツ、ドラマなど特定ジャンルに特化した放送局だけが政府の承認を得られたが、「総合編成」になることで、地上波放送とまったく変わらない放送局が新しくできたことになる。
盛大な記念式典と特ダネ競争で幕開け
12月1日には、4局が合同で記念式典を開いたほか、「少女時代」や「ワンダーガールズ」など人気グループを集めた4局合同音楽番組も制作した。
さらに、各局とも、フィギュアスケートの金妍兒(キム・ヨナ)選手や、2012年12月の大統領選挙での最有力候補である与党ハンナラ党の朴槿恵(パク・クネ)議員の単独インタビューなどを開局に合わせて放送した。
午後8時から10時台のメーンニュース競争も激しかった。jTBCは、ミス韓国コンテスト入賞者出身の女性キャスターを起用して注目を集めたほか、各局ともこの日に合わせた「特ダネ」を連発。これを翌日の新聞でも大きく報じて、「テレビと新聞のメディアミックス」戦略に出た。