IT業界では、よく「標準化」(Standardization)という言葉を耳にする。開発プロセスの統一を指す場合が多いが、部品(プログラム)の再利用、相互活用という意味合いも含まれる。

 標準化は、システムを開発する側とクライアント側とで、やや意味合いが変わってくる。まず、システムインテグレーター(SI)やシステム開発会社など、システム開発側ではどうか。

 過去に様々なクライアントに向けて開発した納品物をテンプレート化して保有しておくと、類似したシステム開発の依頼が来た時に、そのテンプレートを参照して過去の納品物をいくつか結合するだけでよくなる。このテンプレート化が、「標準化」である。

 ただし、これを会社の「資産」として保有しているSIやシステム開発会社は意外と少ない。

 我々も、ある程度テンプレートを保有しているが、基本的にユーザーから直接受注する案件に限った話である。

 いつ受託するか分からない案件のためにテンプレート化することはまずない。テンプレート化したところで、まったく無駄な作業になってしまうかもしれないからだ。

 だから、発注元のヘルプ作業をしている2次請け、3次請けの会社では、この「標準化」は無縁のものとなる。もしも「標準化」があるとすれば、派遣された技術者の「頭」の中、ということになる。

導入事例をテンプレート化して商品化する

 イスラエルのツールベンダー、マジックソフトウェア・エンタープライゼスの日本法人、マジックソフトウェア・ジャパンは、このテンプレートを持っている面白い会社である。

 マジックソフトウェア・ジャパンはアプリケーション開発のための「dbMAGIC」(現在は「Magic uniPaaS」「Magic eDeveloper」)というフレームワーク(開発支援ツール)を販売している。日本では約2万5000社に導入されている。マジックソフトウェアは独自の発想で、導入企業の業種・業態ごとに独自に「標準化」をしている。

 例えば、システム開発会社A社が建設会社B社向けに「dbMAGIC」を用いて在庫管理システムを構築したとする。A社はそのシステムについて「テンプレート化」を行う。そしてA社はB社の承認を得て、「建築業向け在庫管理システム」を販売するのである。現在、約200社がそうやってマジックソフトウェアのサイト上で紹介されている。今までに標準化されたテンプレートは、3000事例を超えている。