トヨタ生産方式が、故大野耐一氏の思いとは異なる方向に進んでいる実態を見て、本来の考え方を伝えたいという思いでこのコラム「本流トヨタ方式」を書き始めて、早くも丸3年経ちました。

 当初はちょうどリーマン・ショックの直後で、巷間は不況、減産の真最中でした。好調な時は、作りさえすれば売れるので、いかにたくさん作るかが課題となります。会社によってやり方に大きな違いがあるわけではありません。

 ところが、減産時にはそうはいきません。そういう時こそ本物のトヨタ生産方式の考え方で対応する必要があります。

本流トヨタ方式の土台にある哲学と2本の柱

 3年経った現在もまた、東日本大震災、それに続くタイの水害等で生産が落ちています。本コラムの初期の記事(2008年10月16日~2009年7月2日)を読み返していただくと、お役に立つ部分があると思います。

 その後、本流トヨタ方式の「土台にある哲学」について、「人間性尊重」「諸行無常」「共存共栄」「現地現物」という4項目に分けてお話ししてきました。今回から、トヨタ方式を支える2本柱の1つである「自働化」の話に入っていきます。(右の図)

安全は「品質」の中に含まれる

 一般的には、現場管理ではまず「安全(S)」があり、その上に「品質(Q)」「原価(C)」「納期(D)」があるとされています。つまり、「S」「Q」「C」「D」の4要素から成り立っているというのが常識とされています。それなのに「本流トヨタ方式」ではなぜ2本柱なのでしょうか。

 そもそも「安全」とは何を指すのか考えてみましょう。

 「本流トヨタ方式」では「安全」を以下のように4分類して考えます。

(1)呪文としての「安全」:口で唱えるだけの安全、祈るだけの安全
(2)製造工程での「安全」:作業安全、設備保全、環境保全など
(3)製品使用中の「安全」:使用者に対する安全、社会に対する安全 
(4)使い終わった後の「安全」:どう回収し、分解し、再資源化するかの安全

 後ほど詳しく説明しますが、「安全」をこのように捉え、突き詰めて考えていくと、それは作業の品質であり、設計の品質であり、経営の品質という「品質」の問題に収斂していきます。

 そこで「本流トヨタ方式」では、安全は「品質」の中に入れて展開していくのです。そうすると、現場の管理項目は「Q」「C」「D」の3項目になります。