電子機器・部品の市場動向に詳しい米IHSアイサプライによると、米アマゾン・ドットコムが14日に米国で出荷開始したタブレット端末「キンドル・ファイア(Kindle Fire)」は、製造原価が201.70ドルで、同社は199ドルで同端末を販売するごとに損失が膨らむ。
通信キャリアのビジネスと同じ手法
IHSアイサプライはこれに先立つ9月末にキンドル・ファイアを“仮想分解”した結果を公表していたが、今回は入手した実機を分解・分析した。
結果は、先の推定製造原価である209.63ドルより若干下回ったものの、この原価には、ソフトウエアやライセンス料といったほかのコストは含まれておらず、それらを入れると完全に原価割れになるとしている。
IHSアイサプライの製品分解分析サービス部門シニアディレクター、アンドリュー・ラスウェイラー氏は、アマゾンが米国で79ドルで販売している電子書籍リーダー端末「キンドル(Kindle)」の廉価版についても原価割れだと指摘している。
ただし、アマゾンはハードウエアそのものではなく、端末を通じて有料コンテンツを販売することで収益を上げるというビジネスモデルを取っており、これは2年間の通信サービス契約の代わりに端末代金を割り引く、米AT&Tや米ベライゾン・ワイヤレスなどのビジネスと似ているとしている。
アマゾンのトム・スクタック最高財務責任者(CFO)も10月25日の決算発表で行った電話会見で、キンドルには「ライフタイムバリュー」があると説明していた。同社は端末によってもたらされる顧客の生涯価値で、投資を回収できると見込んでいる。
無名メーカーとの提携でコスト削減
一方でアマゾンは原価を引き下げるために並々ならぬ努力をしているとIHSアイサプライは報告している。
IHSアイサプライがキンドル・ファイアの実機を分解したところ、無線LANモジュールは台湾ジョージン・テクノロジーズ製で、タッチスクリーンのコントローラーICには台湾イリテックの部品が使われていた。