2010年度予算案では、ガソリン税(揮発油税)など自動車関連諸税に上乗せする暫定税率が事実上維持される。政権交代を実現した2009年の総選挙で即時廃止を掲げたマニフェスト(政権公約)とは大きく異なる結果となった。

 ただ、2010年度の決着は「暫定税率の暫定措置」にすぎず、結論は2011年度予算編成に先送りされている。依然として解決の糸口さえ見えない「方程式」の今後を占う。(文中敬称略)

小沢の「鶴の一声」

 「党と言うよりは全国民の要望だ」──。2009年12月16日、首相官邸を訪ねた民主党幹事長の小沢一郎が居並ぶ閣僚に突きつけた要望書には、ガソリン税の税率水準を維持する考えが盛り込まれた。それまで政府の議論は混乱していたが、小沢の「鶴の一声」で議論が決着した。

 それを受けて、同月22日に決まった税制改正大綱では、本来よりも上乗せしているガソリン税(地方揮発油譲与税を含めて1リットル当たり53.8円)や軽油引取税(同32.1円)、自動車取得税(取得価格の5%)の現行税率を当分の間、維持することとした。

 これは二重の意味でマニフェスト違反だ。まず、政府・与党が二元的に政策を決定していた自民党政権とは異なり、民主党はマニフェストで「政策決定を政府に一元化する」との考えを盛り込んでいた。しかも、暫定税率の維持を求めた企業・団体が見当たらないことを考えれば、党務を司る小沢が政府の決定に口を出したのは明らかな越権行為だ。

 要望書を子細に見ると、参院選をにらんだ小沢の計算もうかがえる。要望書は自動車関連諸税のうち、車検の際に支払う自動車重量税(自家用普通車は重量0.5トン当たり年6300円)だけは半減するよう求めており、これには自動車総連の存在感を指摘する声もある。

野党時代から主張してきた「暫定税率」廃止を、鶴の一声であっさり覆した

 77万人の組合員を擁する自動車総連は、民主党の支持母体である連合内でも有力団体の1つであり、組織内候補の直嶋正行経済産業相が入閣を果たしている。

 このため、一部には「石油業界の労働組合JEC連合よりも、自動車総連に配慮して自動車重量税の軽減を優先させた」との見方もあり、党利党略を優先した結果、政府・与党の一元化方針を危うくしたと言える。

 もう1つのマニフェスト違反とは、「2010年度から暫定税率を廃止する」との方針を実現できなかったことだ。選挙期間中、民主党は税率廃止による減収(国1兆7000億円、地方8000億円)は歳出のムダ排除などで確保すると強調していたが、ほど遠い結果に終わった。

野党時代は、強硬に暫定税率の廃止を主張

 税率廃止を求める民主党の主張は筋金入りだった。民主党は2007年の参院選で多数を握った余勢を駆って、2008年の通常国会では暫定税率の10年維持を目論む福田康夫内閣の方針に反対した。中堅議員が「ガソリン値下げ隊」と銘打って全国を行脚したり、強行採決に抗議する若手議員が衆院本会議の入口を封鎖したりした姿は記憶に新しい。