44代目にして初の黒人大統領、バラク・オバマ氏を選出することで、人種差別という大きな壁を一つ、突き破った米国だったが、国民皆保険を目指す医療保険制度改革は困難を極めており、越えるべき壁はまだまだ数え切れないほどあるようだ。
米国人の中にあるフロンティアスピリットとは
この国では、ネオリベラリズム(新自由主義)による過度の自由放任が近年の経済混乱をつくり出した根本的原因だと言われようと、規制を嫌う多くの経済人たちはケインズ主義的政策には否定的である。
先進国で最も高い銃犯罪件数を世界中から責めたてられても銃を手放す気はさらさらない。冷戦時代には、共産主義という思想、システムそのものを悪と見なし、恐怖の赤狩りを平然と成しうるほどの国だった事実もある。
こうした米国人の心の中には「他人から指図は受けない。自力で人生は切り開いていくものだ」という考えが少なからずある。敬虔なキリスト教徒も多いのだが、その宗教的扶助精神に克って、自立していこうとする彼らの根源は、この国の始まりの頃の必須アイテム「フロンティアスピリット」が埋め込まれたDNAにあると言っていいだろう。
17世紀になって、祖国での生活に様々な理由から別れを告げ、北アメリカ東海岸に大挙手ぶらで押し寄せたヨーロッパ人たち。
18世紀半ば、北米大陸における占有権をかけ英仏間に勃発したフレンチ・インディアン戦争で勝利した英国だったが、その際、英国軍の一員として戦い自立心に自信を持ったアメリカの移民たちが、1776年の米国独立まで突っ走ることになり、自分自身まで追い出されることになってしまう。
開拓者たちを守る救世主となった騎兵隊
19世紀に入り、「本国」ヨーロッパでの変化に追われて「新大陸」地域での植民地支配に急速な衰えを見せ始めたスペイン、ポルトガル、フランスといった国から、カリブの一部を除きほとんどの地域で独立が達成されていった。
そうした中、北米でも大きな壁になっていたミシシッピー川以西を米国が買収することで、いよいよ本格的に「自分の土地」を求めて西へ西へと進む米国人の『西部開拓史』(1962)が記されていくことになる。
もちろん、この「開拓」という表現は、白人の目から見た文明の押しつけを意味し、進取の気性に富んだ自分たちが文明を広めていくという「明白なる運命」に基づき進められるものであった。
そんな地で新たな人生を求める者にとっては、フロンティアスピリットという積極的かつ自立的な開拓者精神が頼りだったが、進む先には、大自然の驚異と「インディアン」の襲撃という試練が常に待ち受けているのだった。
1855年に設立された騎兵隊は、そんなフロンティア(最前線)の人々を守ることを使命としていたが、西部劇ではいつもどこからともなく救世主のごとく現れる有難い存在でもあった。