アドテック東京2011リポート3回目の今日は、10月28日に行われた、「スマートフォン・マーケティング」の3つのセッションについて報告する。

 最初のセッション、「スマートフォンで成功するエコシステムを作り出すカギを探せ!」では、ディーツーコミュニケーションズCEOの宝珠山卓志氏をモデレーターに、モバイル・コンテンツ・フォーラム常務理事の岸原孝昌氏、野村総合研究所上席コンサルタントの北俊一氏、慶応義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏の3人が議論を交わした。

デジタルコンテンツのスマホ移行、マルチデバイスでの広告展開が課題に

左から、ディーツーコミュニケーションズ 宝珠山卓志氏、慶応大学 夏野剛氏、野村総合研究所 北俊一氏、モバイル・コンテンツ・フォーラム 岸原孝昌氏(写真提供:dmg::events Japan、以下同様)

 まず岸原氏が、モバイルコンテンツ市場の現状を説明した。2010年の国内のモバイルコンテンツ関連市場(コンテンツとコマースの合計)は1兆6550億円で、前年比9%増。

 しかし、その成長の裏で懸念されている問題があるという。それはスマートフォンへの移行だ。現在のスマホのデジタルコンテンツは推計123億円。スマホが急速に普及する中で、6500億円のデジタルコンテンツ市場がスマホにスムーズに移行できるかどうかが課題だという。

 移行に伴いユーザーが退会し市場が消滅する心配が持たれており、「できるだけ円滑に移管できるようにすること。まさにスマートフォンへのシフトをどうするのかが一番のテーマになっている」と岸原氏は述べた。

 スマホ広告の見通しについて北氏は、スマホ広告だけで閉じて考えるのではなく、スマートテレビやタブレットなど多様なデバイスとどう連携させるかがカギだと指摘した。

 同氏は「モバイル広告市場は1兆円のポテンシャルがある」と見ており、「日本の広告市場は6兆円、販促まで入れると19兆円ある。どちらかというと広告よりも販促の方からお金を取り込みながら、モバイルだけにとどまらず、テレビや新しいタブレットなどマルチデバイスで連携させるような広告と捉えれば、もっと市場規模は大きくなるのではないか」との考えを示した。

 夏野氏は、「スマホ広告と言っている時点でアウトだと思う」と指摘した。「インターネット広告という世界の中で、スマホやPCなどのデバイスをうまく使い分けしながら、しかしデバイスに固定されることのない販促といったものが出てくると思う。そういう意味では、北さんのいう1兆円というのはすごくリアリティーがある。大きな変革がこれから起こると思う」と語った。

個人情報問題など新たな課題が噴出する可能性が

 スマホが抱える別の課題についても議論された。その1つが、個人情報に関するもの。夏野氏は、日本で2000年代後半に起きた青少年の出会い系サイトの問題や振り込め詐欺、個人情報の流出といったことが、スマホの普及に伴い「激しく起こってくる」と警告を発した。