内需主導型経済への転換が叫ばれるようになって久しいが、肝心の主役となるべき小売り、食品、医薬品などの内需関連産業は伸び悩みが続いている。国内では大きなシェアを持つ「お山の大将」(大和田正也日興コーディアル証券常務執行役員・企業情報本部長)も、世界市場ではまるで歯が立たないことも珍しくない。

 国内ビール大手のキリンホールディングスとサントリーホールディングスの勝者連合は夢と消えたが、海外進出やM&A(合併・買収)で企業規模の拡大を図らなければ、内需産業の生き残りは難しい。

ひっそりと売られる「一番搾り」

蜜月は長くは続かなかった・・・
(撮影:前田せいめい)

 米首都ワシントンDC近郊に多くの店舗を構える小売スーパー「ジャイアント」のビール売り場は壮観だ。20メートル以上はある陳列棚に、バドワイザー、ミラー、ハイネケン、クアーズ、ギネス・・・。日本でもお馴染みの欧米メーカーの製品が山積みとなっている。

 そんな中で日本の代表銘柄「一番搾り」は、手の届きづらい棚の最上段に小瓶6本入りケースが数箱置かれているだけ。残念ながら「スーパードライ」「黒ラベル」「モルツ」は取り扱いすらない。

 「一番搾り」は決して味で負けているわけではない。筆者の知る限り、米国人も一口飲めば例外なく「旨い!」とうなる。そんな「一番搾り」の苦戦ぶりは、日本のビール業界の雄キリンでさえ米国市場に食い込むことが難しい現状を浮き彫りにしている。

 今さら繰り返すまでもないが、キリンとサントリーの経営統合交渉のきっかけとなったのは、「このままではじり貧に陥るだけ」という危機感だった。

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 人口減に加えて健康志向の高まりもあり、国内ビール需要は減少の一途をたどり、ピークだった1994年と比べ16%のマイナス。縮小する市場で、ビール4社は「血みどろのシェア争い」(荻田伍アサヒビール社長=2010年3月26日付会長就任)を繰り広げてきた。しかし、キリンもサントリーも世界の強豪と単独で戦うには規模が小さすぎ、成長が期待される海外で勝負に出ることは難しかった。

 統合が実現していれば、大手4社が3社に集約されて過当競争が緩和、収益性はアップしただろう。シェア5割を握ることになるキリン・サントリーは価格決定で主導権を握り、海外進出のために経営体力を蓄える余裕を持てたかもしれない・・・。