世界主要市場におけるリコール問題に揺れるトヨタ自動車。一連の騒動の中、同社株が1月に付けた昨年来高値から20%以上、下落したのは記憶に新しい。

 企業イメージの低落、あるいは反トヨタ色を強める米国の議会対策など不安要素が山積する中、同社株は立ち直ることができるのか。

 日本のブルーチップ(米国株式市場で売買される優良銘柄)に強い影響力を持つ海外機関投資家の声を追うと、株価面では早くも「トヨタ・パッシング」が始まっていることが分かった。

2度目のトヨタ・ショックが起きなかったのはパッシングされていたから

 「『日本で最高の会社』とトヨタを崇めてきたファンドマネジャーの運用成績は、昔から良くない」・・・。

 トヨタを巡る一連の問題が噴出した当初、筆者は旧知の外資系運用会社のマネジャーに今後の動向を尋ねた。すると、件のマネジャーはこう切って捨てたのだ。

 トヨタ本体のみならず、系列の部品会社の裾野は広い。年明け以降、一連のリコール問題がメディアを騒がすたび、トヨタ本体のみならず系列企業の株価は下げ足を速め、「東証の下落率上位にトヨタ系企業がずらりと並ぶ日が少なくなかった」(中堅証券)ことは間違いない。

 日本を代表する巨大企業のピンチだけに、個別株の下落は致し方ないところ。

 ただ、年明け以降、欧州諸国の財政問題や中国の金融引き締め観測による世界的な株価下落局面に「連れ安」となる場面こそあれ、東証株価指数(TOPIX)など主要株価指数が、トヨタ問題に起因するショック安に見舞われる場面はなかった。

 2008年、リーマン・ショックに端を発した世界的な消費不況に伴い、トヨタが巨額の業績見通し下方修正を行い、「トヨタ・ショック」が市場全体を覆った際とは大きく様変わりした格好だ。