日本人によく似た風貌の人々が暮らす中央アジアの小国キルギスで、大統領選挙が行われた。昨年4月、北部の街タラスに端を発した騒乱で、独裁者となっていたクルマンベフ・バキエフ大統領(当時)を退任に追い込んで以来、改革を推し進めてきた暫定政府の現首相アルマズベク・アタンバエフが当選を決めた。
キルギスで生まれた親ロシア政権の波紋
民族主義を掲げる他候補と一線を画する宥和姿勢を見せたことが当選の大きな理由と言われているが、犠牲者を多数出した昨年の騒乱の奥底にあるのは、キルギス人とウズベク人との民族紛争に根ざす南北対立。
騒乱自体はバキエフ大統領一族が裏で仕かけたものとも言われている。今もくすぶり続ける対立を、北部出身の新大統領がどう収めていくか注目されるところだ。
新政権は親ロシア路線を取ることが予想されることから、米国との間に2014年まで使用契約が残っているアフガニスタンへの物資供給中継地でもあるマナス空軍基地を今後どうしていくのかも注目の的だ。
この小国の存在感を高めているのがそうした地政学的位置づけである。
騒乱の基点だったタラスも、8世紀製紙法が中国からイスラム圏へともたらされたとされる「タラス河畔の戦い」の地として知られる所だから、中華とイスラムの文化がせめぎ合う地でもある。
首都ビシュケクに残るレーニン像
そうともなれば、中国との経済的つながりは相当強力で、現在劇場公開中のキルギス映画『明りを灯す人』(2010)にも、キルギスの片田舎に投資しようとする中国人が出てくる。
そんなキルギスの首都ビシュケク中心部にある歴史博物館にはCIS諸国には珍しく、ウラジミル・レーニンに関する展示品が数多く並んでいる。
そして、広場には、大半はソ連崩壊後引き倒されてしまったと言われているレーニン像が、デンと居座っているのである。
そんな銅像1つが、歴史認識などの国情を知る手がかりとなる。