島根県松江市と広島県尾道市を結ぶ中国横断自動車道尾道松江線が2014年度末に全線開通する。
両県、とりわけ高速道整備がなかなか進まなかった島根県にとって、松江市~広島市までの移動時間が約50分短縮、交流促進が期待される。
反面、インターチェンジ(IC)が作られなかった沿線の町は「素通り」「空洞化」の危機に直面することになる。
中国山地に囲まれた人口約5500人の過疎地・島根県飯南町もその1つ。打開策として外に打って出ようと息詰まる行政とは裏腹に、「ピンチはチャンス」と着々と地元の足場固めをする民間業者もいる。
1日の通行量7800台が3500台に減少
松江市まで約80キロ、広島市まで約110キロ。これまで両市を行き来する最短ルートは、島根県南部と広島県北部の県境にある飯南町を通るのが一般的だった。ドライバーが一服するには、ほどよい場所でもあった。
町の基幹道路・国道54号線は、南北に伸びる約23キロ。山あいの道を車で走るとガソリンスタンドが7つ、道の駅が2つ。
ほかにも、島根県内有数の豪雪地帯という利点を生かし、年間3万人が訪れるスキー場や松江市、広島市、兵庫県、沖縄県など町外、県外に5店舗を構えるそば屋の本店などがある「飯南町の大動脈」だ。
その大動脈が揺らいでいる。
国土交通省は、尾道松江線開通に伴う2030年の国道54号の交通車両台数を、高速道整備が無かった場合に比べ55%減と試算。単純に当てはめると、飯南町頓原地区で2005年に平日1日約7800台だった車の数は約3500台に、同赤名地区では同約5700台が約2600台にまで落ち込む。
尾道松江線は、2012年度末に現在整備中の三刀屋木次IC(島根県雲南市)から三次JCT(ジャンクション、広島県三次市)までの約61キロ区間が完成予定。