以前、本連載の記事(「企業の情報系システムがSNSで済む理由」)で、メールやコミュニケーションポータルを用いた従来の企業内のコミュニケーションが、ソーシャルネットワークのスタイルのように「フィード化」「ウォール化」していくことの可能性を記した。

 その可能性は、日頃当社が手掛けている業務改革の現場で肌で感じることなのだが、実際にはどうなのか。それを検証すべく、当社のあるチームで企業向けのソーシャルネットワークツールを導入してみた。

 モバイル環境でも使え、馴染みのあるフェイスブックに似た機能・ユーザーインターフェースを持つツールを選定し、原則として「対外的なやり取り以外は、メールではなくソーシャルネットワークでコミュニケーションする」。そういうルールで取り組んでみた。

 その結果、現時点で面白い結果が出てきているので、データをもとに紹介したい。

従来の3倍に増えたコミュニケーション

 運用開始したのは9月中旬。リリース当日から面白い現象が見られた。

 まず、情報の発信者の変化である。普段の会話やメールでは、基本的には上位職者からの発信が多いが、そうではない一般のスタッフがどんどんイベントを登録したり、仕事に有益なリンクを貼り付けたりし始めた。

 自分が主催者ではないミーティングを率先してイベント登録したり、貴重な情報や重要な話が含まれているリンクが貼り付けられる。これは嬉しい反応だ。各メンバーの視点や興味もよく分かる。リアルの世界では分からない原石の発掘みたいなものだ。

 そうこうしているうちに、1つのアップデイト(投稿)に対する各メンバーからのリプライが活発化してきた。ツールの使い方のやり取りから、ミーティングなどの予定の確認、現場で小耳にはさんだ話の情報交換、採用面接のフィードバックなど。様々なディスカッションがスピーディーに行われるようになった。

 タイトルもなく、形だけの挨拶(「お疲れ様です」など)もなく、必要なことのみ短いセンテンスで伝える。このスタイルが発言の敷居を下げているようだ。

 実際のデータで見てみると、メールでの情報共有と比べて、約3倍のコミュニケーション量になった(スレッド単位で2.6倍、それに対するリプライを含めると3.3倍)。発信、参画ともに大幅に増加している(以下の表)。

メールとソーシャルネットワークの同一期間でのコミュニケーション量比較(メールのスレッド数は、メーリングリストおよび複数名に対して発信したものを対象)