「いまの世には3人のオオカミ少年がいる」。最近、国際金融の世界ではこんなジョークがはやっているそうだ。
1人目のオオカミ少年を仮にAとしよう。A少年は世の中の人々に、こんなことを大声で叫んでいるのだという。「大変だ、大変だ。日本の財政赤字がものすごいことになっている。このままだと財政がパンクして、日本は破産国になってしまう」
実際、2010年度予算案では、37兆円の税収に対して、国債の新規発行が過去最大の44兆3000億円である。その結果、財務省によると、国債や特殊法人などへの貸付原資となる財投債などを合算した「国の借金」の総額は2009年度末で初めて900兆円の大台を超え、2010年度末で973兆1625億円となる見通しだ。
次にB少年。彼が言っていることはこうだ。「大変だ! 米国の経常収支赤字がすごい数字だ。このままだと、ドルの暴落だぞ。ドルは基軸通貨の座から滑り落ちてしまう」
確かに米国の経常収支赤字は尋常ではない。2005年は8000億ドルでGDPの7%近く。金融危機で輸入が減ったとはいえ2008年も約6700億ドルと膨大である。ドルは暴落の危険水域にある。こう考えても少しも不思議はない。
さらにC少年。「大変だ。大変だ。中国の経済はバブルだ。このままこんな成長が続くわけがない。2008年の北京オリンピックは何とか乗り越えたが、今年5月からの上海万博の後が危ないぞ。今度こそバブルは破裂する」
なにしろ、つい最近発表になった中国の2009年10~12月期のGDP成長率は前年同期比10.7%である。日本はもちろん欧米諸国も依然不況脱出に苦しんでいるというのに、一人V字型の回復だ。が、それを支える財政出動と金融緩和がマネーを大幅に膨張させている。バブル崩壊を心配するのも無理はない。