国内の株式市場に関する報道に接していると、「ダイリューション(希薄化)」という専門用語をよく見かける。自己資本比率規制の強化に対応するため、邦銀が計画している大型増資がその主因とされるケースが多い。

三菱UFJ、米地銀ユニオンバンカルを完全子会社化三井住友、英バークレイズに1000億円規模の出資みずほ銀行、中国の中信銀行の株式取得へ - 東京

自己資本拡充を迫られるメガバンク(参考写真)〔AFPBB News

 しかし、世界的には「ドルキャリー」と言われるほど、資金余剰が続いている。それなのに投資マネーが不足し、企業が増資すれば株価が下がるなどという現象は不思議に思える。実際、中国やインドなどアジア新興国には巨額のマネーが流入しており、ダイリューションという言葉が聞かれるのは日本だけだ。

 一義的な原因は、日本の株式市場に対する海外投資家の関心が薄れ、世界の投資資金が日本企業に向かわなくなっている点にある。「日本企業は成長が見込まれないから」と言うのは簡単だが、リーマン・ショック後の金融システムに本質的問題を抱えている欧米に比べても、日本の被投資資金が見劣りするのは奇異に感じる。

海外投資家が警戒する日本のカントリーリスク

 この年末年始、海外に居住しながら様々な分野で活躍する知人と会う機会を得た。彼らは危機感をあらわにしながら、異口同音に「日本は大丈夫か?」と尋ねてくる。そして、我々が日本のマクロ経済政策にばかり責任を問う姿勢とは異なる視点から、日本の問題点を切り出してくれた。

 ある米系証券マンは外国人投資家が日本株に魅力を感じない大きな問題を2つ指摘した。それは(1)投資地域としての安全性の問題、つまり安全保障上の問題がある(2)個別の各企業に成長戦略のアピールがない――である。

 (1)については既に手遅れの感も否めないが、筆者自身を含め、米軍普天間飛行場の移設問題がどれだけこの国の在り様に関する根本的な問題なのか、その認識が甘かったことを反省せざるを得ない。

 日々のニュースでは、沖縄の人々の暮らしの問題や自然に与える影響が強調されている。その一方で、これまでも多くの犠牲を払いながら守ってきた安全保障に関する論点は具体性を欠いている。