1000円の歯磨き剤は贅沢品ではありません!

歯科医が提言する「食と健康」 その2

2011.10.31(Mon) 坂本紗有見
筆者プロフィール&コラム概要
坂本紗有見・銀座並木通り坂本矯正歯科クリニック院長

 歯磨き剤はスーパーマーケットやドラッグストアの売り出しの常連。誰でも頭に思い浮かべる定番銘柄なら、200円以下が実勢購入価格といったところでしょうか。

 だから、歯医者の口車に乗せられて「1000円の歯磨き剤を買う」など、とてつもない贅沢か酔狂なことと思えるでしょう。でも、これを読んだからといって、1000円の歯磨き剤を買わなきゃいけないわけではありません。あくまでも選ぶのはあなたです。とりあえず、歯医者の言い分に耳を傾けて下さい。

汚れをこそげ落とすのは、もう古い?

 一昔前の洗濯機はガランガランと大音量で回っていましたが、最近は夜中の洗濯が近所迷惑にならないほどに静かです。モーターの性能や、静音機能が向上したこともあるでしょうが、洗剤に「汚れを浮かせて分解する」パワーが加わり、「ナノ」技術で洗浄成分が繊維の奥の奥まで入り込むので、力任せに洗濯物を攪拌し、叩いて洗う必要がなくなったのです。

 歯磨き剤の世界にも「汚れを浮かせて分解する」「ナノ」の技術は既に取り入れられているので、一昔前よりも汚れをキレイに落とし、虫歯を予防する精度はぐっと上がっています。

 ただ残念ながら、実勢価格200円以下の売れ筋銘柄は、昔ながらの研磨剤でこすって洗い、ミントのフレーバーでスッキリ感を醸し出して「キレイになった」気分を演出するのが基本コンセプトです。もちろん、研磨剤で磨くことに効果が無いわけではありません。汚れはある程度こそげ落とせます。でも、同時に汚れが付着している歯の表面の薄皮一枚を剥いているのです。

 研磨剤は非常に小さな粒なので、一生かかっても歯が減ってなくなってしまうわけではありません。ただ、歯の表面のエナメル質に小さなキズ(もちろん、目に見えないほど微細なものです)を残してしまうのです。汚れは小さなキズに入り込み、一度、隙間に入った汚れは落としづらくなります。すると、その汚れに次なる汚れが付着し、蓄積していく悪循環が始まります。口腔内を清潔に保つための歯磨きで、歯にキズを残し、汚れを蓄積させるのはなんとも皮肉です。

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経験のない超高齢化社会へと加速していく日本。これからの発展を考える上で、その全ての基盤となる「日本人の健康」は重要性となる。ここでは「健康」について様々な視点で伝えていく。