一昨日昨日と鳩山由紀夫政権のこの1年を、普天間問題東アジア共同体構想について考察してきた。3回目の今日は気候変動問題を題材に鳩山政権のこの1年を予想してみたい。

 筆者は、昨年12月にコペンハーゲンで開かれた国連気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)を前に、「続・民主党よ、お前は何者か」で、京都議定書延長を巡る褒め殺し戦術に鳩山由紀夫首相が遭う危険性を次のように指摘した。

COP15では、各国の不満の矛先が中国に集中

途上国グループ、EUの温暖化対策の資金拠出案を批判

批判の矛先は中国に向かった。写真は中国から参加した何亜菲・外交部長助理〔AFPBB News

 「最も恐れているシナリオは、鳩山首相に対する欧州勢の褒め殺し戦術である。首相の25%削減表明を最大限にたたえて気をよくさせておいて、『京都議定書を殺してはなりません。京都議定書の付属書に各国の削減目標を書き込ませましょう。どうぞ日本がその先頭に立ってください』と持ちかけ、それに鳩山首相がイエスと言ってしまうことだ」

 結果を見れば、それは杞憂に終わった。鳩山首相は京都議定書の延長圧力に最後まで屈しなかった。

 COP15の様子を取材すると、どうやら各国の不満の矛先が圧倒的に集中したのは中国だったのは間違いないようだ。

 この点は宮家邦彦氏が「欧米による侵略は二度と許さない!」でも書いているし、英エコノミスト誌の「COP15の内幕と気候変動交渉の行方」にも詳しいので詳述は控えるが、フランスのニコラ・サルコジ大統領の呼びかけで急遽主要排出国の首脳級会合が場外で持たれた時、中国だけ温家宝首相が姿を表さず、下っ端の役人に応対させたことが、各国首脳が中国批判で足並みをそろえたハイライトだったという。

 日本政府交渉筋によると、この首脳級会合の場で中国に対して一番腹を立てていたのはサルコジ大統領だったそうだが、COP15が終わってから表の舞台で中国をあからさまに非難したのは英国だった。

表立って発言せず、事なきを得た鳩山首相

 エド・ミリバンド・エネルギー気候変動相が英ガーディアン紙に寄稿し、「合意を得られなかったのは中国が拒否権を発動したからだ。法的拘束力を持つ議定書の策定を妨害することを許してはならない」などと名指しで中国を批判した。

 首脳級会合には、鳩山首相ももちろん出席していた。この席で、首相が表立って発言しなかったため、マスメディアでは「存在感を発揮できず」という形で紹介されたが、外務省幹部は「もし鳩山首相が一言でも中国にクレームをつければ、中国は『京都議定書を殺そうとしているのは日本だ』とかみついて、欧米の中国批判の矛先を変えることに最大限利用しただろう。鳩山首相が発言を控えたのは外交戦術的には全く正しかった」と擁護する。

 誰もがジョーカーを引く可能性があったゲームで、結局、中国がジョーカーを引いてくれたおかげで、日本は京都議定書の延長圧力をかわすことができたということだろう。