おとそにおせち、科学が明らかにする食の真実

食に関するウソ・ホント~後編

2010.01.07(Thu) 森田 由子
筆者プロフィール&コラム概要

 「風邪にはビタミンCが効く」と言われる。寒い日が続く中、風邪の予防のためにみかんを食べたり、ビタミンCのサプリメントを服用したりしている人は少なくないのではないかと思う。

 だが、本当にビタミンCは風邪に効くのだろうか。

ビタミンCを毎日摂取すると風邪を引かないのか

 ビタミンCが風邪に効くという説は、1970年に、ノーベル賞学者ライナス・ポーリグが著書で主張したことで、世界的に広まった。しかし疑問を呈する向きも多く、長らく議論を呼んできた。

 医薬品研究の文献のアセスメントを世界的に行っている「コクラン共同計画」は、数十年分にわたるビタミンCの臨床疫学研究を分析した。その結果は、意外なものだった。

 「一般的には、毎日200ミリグラム(日本人成人の摂取推奨量は100ミリグラム)摂取しても、風邪の予防効果はない。症状の緩和や回復促進効果もわずかで、臨床での有用性は疑問」という結果だったのである。

 マラソンランナーやスキーヤーのように、極端な身体的ストレスや寒さストレスにさらされているケースでは、感染率が半減する効果がある、ともしている。しかし、その一方で、ビタミンCの大量摂取が、解熱鎮痛剤の主成分であるアセトアミノフェンの排泄を遅らせ、副作用のリスクを高める危険性も示唆されている。

 科学的な根拠なく、食べ物に過大に期待を寄せることを「フードファディズム」と言う。前編でも触れたが、食べ物と医薬品の領分を承知して、食事でできる範囲で最善をつくすことが重要だ。健全な体をつくり、風邪にかかりにくくするには、必須栄養素であるビタミンCは当然欠かせないが、他の栄養素もバランスよく取ることをお忘れなく。

 皆さんには、食と科学の関係に関心を持ち、ぜひとも正しい知識を身につけてほしい。「‘おいしく、食べる’の科学展」は、そうした思いから企画した展覧会である。3月22日まで日本科学未来館(東京都江東区)で開催しているので、機会があれば、ぜひご覧いただきたい。

十割そばを作るのはなぜ難しいのか

 さて、年末、年始は、年越しそばやおせち料理など、日本の伝統的な料理を食べる機会が多い。今回は、こうした伝統食の世界でも様々な先端科学や技術が使われていることをご紹介したい。

 年越しと言えば「そば」だ。まずは、職人しか作れないようなそばを、誰でも簡単に作れるようにするための科学と技術から見ていこう。

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日本科学未来館 科学コミュニケーター、理学博士。1970年生まれ。東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻(修士、博士)。同大学院 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 助手(現在の助教)。万有製薬つくば研究所 研究員を経て、2006年より現職。主な著書に『生き物たちのふしぎな超・感覚』(ソフトバンククリエイティブ) がある。


科学技術の現場

日本の国力を根幹から支える科学技術。地球温暖化問題、食糧問題、人口問題など人類全体の問題解決に際しても、その重要性はますます高まっている。企業、大学、研究機関などで研究・開発が進められている先端技術や研究内容を紹介する。