日本人の「国産」「天然物」信仰はスキだらけ

食に関するウソ・ホント~前篇

2009.12.17(Thu) 森田 由子
筆者プロフィール&コラム概要

 スーパーの食料品売り場に並んでいる、「国産牛」と表示された牛肉のパック。実は、それがオーストラリアで生まれた牛だと聞かされたら、皆さんはどう思うだろうか。

 「偽装表示」だと言って怒りだす人もいるかもしれない。でも、一概にそれを「偽装」だと言うことはできない。実は、十分にあり得ることなのだ。

 「産地表示」のルールによれば、生まれてから最も長期間育てられた場所が「産地」として表示されることになっている。ということは、生後3カ月でオーストラリアから連れて来られた仔牛が国内で12カ月育てられたら、「国産牛」という表示になる。

 そして、これは「和牛」であることを意味しない。和牛というのは肉牛の品種であり、産地情報ではないからだ。だから、「国産牛=和牛」と考えるのは早とちりである。情報を提供する側に悪意がなくても、消費者の勘違いによって、このように情報が正確に伝わらないことがある。

食品パックの表示情報は味覚よりも信頼できるのか

 日本科学未来館(東京都江東区)では、現在、企画展「‘おいしく、食べる’の科学展」を開催している(会期は2010年3月22日まで)。

「‘おいしく、食べる’の科学展」の会場風景
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 企画展の準備が始まったのは、2年前の2007年。産地や賞味期限の偽装が立て続けに告発された年だった。なにしろ世論調査(「livedoorニュース」が実施)によれば、1年で最も印象に残った出来事として選ばれたのが、「食品会社による不祥事」である。安倍晋三首相の辞任もあったのだが・・・。

 そのように食への信頼が揺らぐ中、この企画展が計画された。科学や技術がどのように食を支えられるのかを整理し、皆さんの幸せな食生活の実現に少しでも貢献しようという狙いの展覧会である。

 ここでは、企画展の重要なテーマの1つである「食の安全」についてお話ししようと思う。

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日本科学未来館 科学コミュニケーター、理学博士。1970年生まれ。東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻(修士、博士)。同大学院 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 助手(現在の助教)。万有製薬つくば研究所 研究員を経て、2006年より現職。主な著書に『生き物たちのふしぎな超・感覚』(ソフトバンククリエイティブ) がある。


科学技術の現場

日本の国力を根幹から支える科学技術。地球温暖化問題、食糧問題、人口問題など人類全体の問題解決に際しても、その重要性はますます高まっている。企業、大学、研究機関などで研究・開発が進められている先端技術や研究内容を紹介する。