最近、改造自転車に乗ったテレビタレントやスポーツ選手が交通反則切符を切られたといった報道を目にすることが多くなった。近年のエコブームから人気が出た自転車も、ファッション性や軽量化を追求するあまり、ブレーキをはずすような改造が横行していることから、取り締まりを強化したらしい。
改造自転車と「ヘッドホンライダー」の横行
そんな違反者の中にたまたま有名人がいたというだけの話なのだが、ワイドショーやタブロイド紙が取り上げることでニュースは一気に突出したものになるから、こうしたことに国民の関心を惹きつけるという意味で、ポップカルチャーの人々の存在価値は大きい。
自転車と言えば、私には、それ以上に気になっていることがある。ヘッドホンをつけて運転している人が近頃やけに目立つ、ということである。私の反射神経が鈍くなってきたせいもあるのかもしれないが、そんな自転車にひかれそうになることも多くなった。
接触しても謝る素振りさえ見せず、腹立たしい思いにかられることも少なくない。しかし、それも、ぶつかったということに気づいていないだけなのかもしれない、と思うことがある。
彼らは音楽を聞くという現実世界とは離れた精神活動を行いながら、身体では運転という行為に及んでいるわけだから、注意力も散漫となるし、音は振動であるから、周りの状況変化にも鈍感になってしまうからである。
強盗に襲われまいと、いつも周囲の様子に気を配っている必要がない日本という国ならではの平和ボケとも言えそうだが、これではいきなり現れた通り魔やビルからの落下物から身を守ることは難しいだろう。
スティーブ・ジョブズ氏の類い稀なる力
こうした変化を社会にもたらしたのが、持っていることを忘れるほどに小型化され、ダウンロードで曲もすぐに手に入れることができるアイポッド(iPod)やアイフォーン(iPhone)といった存在。アップルの果たした役割は大きい。
その創造性を担っていたスティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)が引退を表明してから1カ月あまり経つ。
復活を遂げた頃出版された「スティーブ・ジョブズ 偶像復活(iCon Steve Jobs)」を読んでみると、良きにつけ悪しきにつけ、規格外の人物であることが見て取れ、個人の類い稀なる力が引っ張ってきたアップルの今後を懸念する声が出ていることも頷ける。
この本の題名「iCon」が示すものは、サイバースペースへの入り口となるコンピューターアイコン、そして、時代を代表し崇敬される存在であることだが、その訳語「偶像」には少々違和感がある。