コーポレートランド。

 また新しい言葉が米国で生まれている。世界中の国をビジネスの舞台にする大企業が、あたかも他国を自分たちの領土(ランド)であるかのように振る舞う意識と業態を指す。

 2010年ピューリッツアー賞(時事漫画部門)を受賞したマーク・フィオーレ氏が制作した「CorporateLand」という風刺ビデオのタイトルがこの新語の出所である。

「基本的企業権」の確立を狙う大企業

 同氏は、大企業が「基本的人権」ならぬ「基本的企業権」と呼べる独善的な権利を主張し、「世界は役員が望むことがすべて適う場所」という幻想を持ちつつあると警鐘を鳴らす。その流れに一撃を与えるためにビデオを制作し、ピューリッツアー賞受賞につながった。

 世界中でビジネスを展開し、利益を上げることを使命としている企業人にとっては聞き捨てならないかもしれない。けれども、今米国ではコーポレートランドという言葉が風刺ビデオから1人歩きし、21世紀型の大企業の特質を捉える言葉として注目を集めている。

140億ドル利益のGEが「法人税ゼロ」、米国内で税制改革議論が再燃

GEのロゴ。同社は2010年度に140億ドルの利益を上げながら米国で法人税を払っていない〔AFPBB News

 これまでは多国籍企業という言葉が多用されてきた。定義はいくつかあるが、米国では売上高上位500社以内で、国外5カ国以上に製造子会社を持つ企業のことである。

 ゼネラル・モーターズ(GM)やゼネラル・エレクトリック(GE)、インテル、IBMなどが代表格だ。

 こうした大企業はこれまで米国経済の牽引役であり、業績が上向けば米国経済も連動する形で好況に導かれもした。

 かつて「GMにとっていいことは米国にとってもいい」と言われた時代があった。日本でも、トヨタ自動車の成功は日本の成功と呼べる認識が今でも共有されているかと思う。

 コーポレートランドと多国籍企業の違いは、企業業績が伸びても国家が恩恵を受けるとは限らなくなっている点だ。世界の経済環境が過去10年ほどで大きく変化したこともあるが、米国経済が低迷している中で、彼らの業績が伸び続けている事実がある。