国際的ハッカー集団「アノニマス」が、政府機関、大手企業をはじめとして、情報自由化の敵と見なすあらゆるものへのサイバー攻撃を続けている。

 9.11同時多発テロ以降、米国が始めた「テロとの戦い」に出口が全く見えない中、別の脅威にも対処せざるを得ない現実に直面しているわけだが、サイバースペースという見えない空間での戦いということも手伝い、世間の関心はあまり高くないようだ。

 こうしたサイバー攻撃というものに関しては、現実より映画での扱いの方が先行気味で、交通、金融、通信、電気など、ワシントンD.C.の根幹的インフラがサイバー攻撃を受ける『ダイ・ハード4.0』(2007)といった作品もあった。

 しかし、大混乱をきたす街の描写を見ていても、現実離れとの印象が強かった。

防衛省、警察庁や三菱重工業に仕かけられたサイバーテロ

 とはいえこの9月、日本の防衛省、警察庁をはじめとした政府機関へのDDos攻撃(サービス停止攻撃)ばかりか、不正侵入された三菱重工業の複数のサーバーでのコンピューターウイルス感染が判明した。

 原子力発電プラントやミサイルといった極めて高い機密性が要求される情報が漏洩の危機にあったと聞けば、関心を示さないわけにはいかなくなる。

 今回のサイバー攻撃の発信源として中国が疑われていることに中国政府は不快感をあらわにしている。

 しかし、IT先進国エストニア、そしてロシアと戦争状態にあったグルジアという旧ソ連諸国の受けたサイバー攻撃がロシアからのものではないか、との疑惑があったように、政治的意図を疑わせるものは現実に存在している。

 陸海空宇宙の次はネットということで、米国も5月にはサイバーコマンドを創設しているし、事故が起きてしまってからボロが次々と噴出している原発のようなことがないよう、我が国でも早急なる対策が求められるところだ。