東京・霞が関の諸官庁では、各局フロアの壁上部に閣僚以下局長クラスの役名が書かれた電光掲示板が取り付けられている。緑や青など掲示板ランプの色は各省で異なるが、このランプが点灯していれば大臣や局長が省内の自室にいるという目印だ。
この夏まで、平日のビジネスタイムには、ほとんどのランプが消えていた。つまり「外出中」だ。しかし、民主党政権になってから異変が起きた。大臣、副大臣、政務官のいわゆる政務三役のランプはいつも消えているのに、事務次官、局長、審議官などの官僚のランプは日中でもほとんどみんな点いているのだ。
各省庁の高官が国会会期中に各部会に出席して政府委員のバッジを着けて議員に代わって答弁したり、議員会館を回って政策をご進講する必要がなくなったからである。某経済官庁の事務次官が嘆く。「国会対応、大臣レク、審議会運営が役人の主要な仕事だったのに、それぜんぶ要らないそうです」
高級官僚は無用の長物?
長年の自民党政権の間、官僚の仕事は、国会会期中に国会議員諸氏の質問内容を事前に察知して、想定問答集を作ることだった。また閣僚に所管業種や案件に関わるレクチャーをするのも欠かせない仕事だった。役人にとって、政治家や閣僚は自分たちの仕事を代弁してくれる大事なスピーカーであり、政策のツボは正確に伝えなくてはならなかった。
さらに政策を実現するため、有識者を集めて審議会を運営するのも大事なプロセスだった。審議会は、表向きは官庁が目指すべき政策について議論するための閣僚の諮問機関だが、大学教授や企業役員など審議会委員はたいてい本業が多忙なため、実際は、官僚が審議会の議題を決め、議論のシナリオを作成し、答申書の下書きを作ったものだ。
脱官僚を掲げる民主党は何事も政治主導で、役人がしゃしゃり出ることを嫌っている。「政務三役」にとって、もはや高級官僚は無用の長物なのである。