元公務員の身としてはなかなか声を大にして言いにくいのだが、現在の反公務員キャンペーンは訳が分からない。民主党が言う「官僚支配から国民の手に政治を取り戻す」という主張も分からない。

 例えば、「日本の公務員は数が多すぎる。公務員のクビをもっと切れ」と言う。

 しかし、皆さんは、他の国に比べて日本の公務員が具体的にどれほど多いのかという数字は聞いたことがないと思う。なぜなら、日本は他の国々に比べて公務員の数が圧倒的に少ない国だからだ。

 他国のデータと並べると、「日本の公務員は少数で、しかも不正もせずに、頑張ってやっている」ということになってしまう。だから、日本のテレビや新聞はデータを知っていながらほおかむりをしている。

 経済協力開発機構(OECD)の統計によれば、人口1000人当たりの公務員数は米国78人、フランス87人、イギリス79人、ドイツ55人に対し、日本は32.5人だ。ちなみにこれは昔「特殊法人」と言っていた組織(今は「独立行政法人」と言っている)を含めた数字だ。

 2年程前に「居酒屋タクシー」がマスコミに激しく非難された(この時のマスコミの低劣さにはただあきれるしかなく、本当に「マスゴミ」と言いたくなる)。遅くまで働いている公務員は終電に間に合わなければタクシーで帰るしかない。タクシーの運転手にしてみれば、遠距離を乗ってくれる客は大事なお得意さんだ。大事なお得意さんに缶ビールを1本振る舞うのは、口を極めて非難することなのか。

徹夜して、床で寝泊まりして働くのが当たり前だった

 日本の役人は不正をせず、よく働く。中には不正をする人間がいないわけではないが、確率としては民間を上回ることはない。

 私が通産省にいたのは今から15年も前だから、今は少し違っているかもしれないが、その日のうちに家に帰れることはほとんどなかった。それでいて、翌日は朝から勤務しなければならない。

 私が若かった頃は、タクシー券などというものはこの世の中に存在していなかった。だから、終電以降は役所で寝るしかなかった。素人は机の上で寝ようとするのだが、落ちると危ないので、ベテランになると床に直接寝るようになる。

 「平気で床に寝られるようになったら一人前だ」と言われた。少し気が利いたヤツは(まあ、課長補佐以上か・・・)局長室のソファーで寝る。「私、徹夜で頑張っていますよーっ」というデモンストレーションでもある。