「出口戦略」は、現在、主要国の中央銀行が、共通に抱えている課題だ。
2008年秋のリーマン・ショック以降、各国中銀は超低金利政策や、非伝統的な信用緩和策などにより実体経済の下支え役を担ってきた。しかし、最悪期を乗り切った今、どこかのタイミングで非常時の金融政策から、平時の金融政策へと正常化させていかなければならない。
さて、どこの中央銀行が、無事にいち早く「出口」までたどり着くことができるのか? 金融調整手段(オペレーション)から着順を予想してみた。
日銀だけが出口から遠のいた
日銀は12月1日、臨時金融政策決定会合を開き、一段の緩和策として固定金利・期間3カ月の資金供給オペを導入した。その実効性はともかくとして、日銀のプロモーション戦略に踊らされて、報道各社が「総額10兆円」「追加金融緩和」と大見出しを打ったことは12月3日付の当コラム「日銀追加緩和のお寒い実態」で紹介した。日銀は、出口からさらに遠のいた。
ちょうど同じ頃、欧米の中央銀行はほぼ足並み揃えて、日銀とは逆方向、つまり、出口に近付く方向で、新たな取り組みを始めている。時系列で紹介してみよう。
米連邦準備制度理事会(FRB)は11月30日、「リバースレポ(買い戻し条件付き売りオペ)」という新たなオペの試験実施を表明した。次いで欧州中央銀行(ECB)が12月3日、1年物資金供給オペの月内打ち切りを決定。さらに同日、イングランド銀行(英中銀)は保有する社債売却の検討に着手した。
このうち、ECBのオペ打ち切りは、出口戦略の一歩であるのは明白だ。ECBが2008年秋のリーマン・ショックを契機に導入した金利固定・金額無制限の1年物オペは、非伝統的緩和策を担う中心的なオペだった。さすがにこのオペの打ち切りは、日本のマスコミでも報じられた。
ほぼ無視されたのが、FRBのリバースレポと英中銀の社債売却だ。いずれも極めて技術的な側面が強く、実際に両中銀とも金融政策運営との関連付けを否定しているが、「将来の出口政策を視野に入れた対応であるのは間違いない」(都銀)と受け止められている。